long dreamA


□禁句-taboo-
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部屋には海藤、蔵馬、未来。
そして魂を抜かれ棒立ちになった桑原、飛影。


(桑ちゃんが魂をとられちゃった…!私のせいだ…)


食べちゃったの?と桑原に話をふったことに、未来は責任を感じる。


「オレはこの能力を禁句(タブー)って呼んでるんだ」


禁句。それは海藤の能力を表すには最も適した言葉だろう。


「魂だけはさ〜、鍛えようがないよね。美しくもろい。これにちょっと力を込めただけで容易く握り潰すことができる。少しだけひっかいてみようかな?」


桑原と飛影の魂を傷つけることを匂わせた海藤のセリフに未来の目は動揺でゆれるが、蔵馬は違う。


「やってみろ。それはオレにとっての禁忌(タブー)だと言っておく」


椅子に座り直し、鋭く冷めた瞳で目の前にいる敵を見据える彼。


「もしお前がそんなマネをすれば、いかなる手段を用いてでもお前を殺す」


「ナイス。やっとキミの素顔が見れたような気がする」


落ち着いているのは、海藤も同じ。
人差し指でずれた眼鏡を整え、不敵な笑みを浮かべている。


しかし、蔵馬が上げた右手に持ったモノを目にしたとたん、海藤の余裕は脆くも崩れた。


「な…!?あのドアのカギ!?」


いつの間にか柳沢からカギを奪っていた蔵馬に、狼狽する海藤。


「蔵馬、植物に抜き取らせたんだね!」


さすが蔵馬。
こちらのペースに持ち込んでくれた彼に未来は感謝し、勝利への希望も見出だしていた。


蔵馬は部屋の中にある植物を操り、こっそりと柳沢の胸ポケットからカギを取っていたのだ。
痛くも痒くもなかった柳沢は、そのことに全く気づかなかった。


「二人の魂は大事に扱え。オレが必ず無事にとり戻す」


既に一本とられている海藤は蔵馬からの宣戦布告に冷や汗をかくが、これからの戦いを楽しみにしているようにも見える。


「ところで禁句(タブー)を変えることはできないのか?」


「もちろんできるよ。実は初めからそのつもりだったんだ。キミと一対一になったらルールを上級にしようとね」


「あ…」


蔵馬と海藤の会話から、未来はあることに気づく。


(海藤くんは、蔵馬と二人で対決したいんだ…)


そのために、飛影や桑原が脱落するまで“あつい”と言ってはいけないルールのままで辛抱強く待っていたのだろう。


定期テストで蔵馬に勝てたことがないと言っていた海藤。
海藤は蔵馬に…いや蔵馬との勝負に執着している。


「私、邪魔かな?」


こそっと蔵馬に小声で未来が話しかけると、彼は首を横にふる。


「未来は何も言わずにオレの隣にいてくれたらいい。見守っていてくれ」


こくり。
未来が頷いたのを確認すると、蔵馬は一瞬で表情を厳しいものに変え海藤の方を向く。



「もしオレに禁句(タブー)を決めさせてもらえば、45分以内でキミに禁句(タブー)を言わせてみせると断言する」



部屋に戦慄がはしった。


未来も柳沢も、誰もが驚きで静止する中、おもむろに口を開いたのは海藤。


「…もしオレがその時間内に禁句(タブー)を言わなかったら?」


「オレの魂をやろう」


キッパリとした口調で蔵馬が言い切った。


「45分以内で勝負を決める!45分以内に禁句(タブー)を言った方が負けるし、もし時間をオーバーすれば君の勝ちだ」


あまりにも海藤に有利な条件である。


(蔵馬、何を考えてるの…!?)


強気な蔵馬の発言に、緊張する未来は生唾を飲み込む。


「よし、その条件でいいよ。さあキミが考えたルールを教えてもらおう」


しばらく考え込むようにしていた海藤だったが悩んだ末、蔵馬の条件をのんだ。


「禁句(タブー)は一文字。最初は“あ”。その次は“い”。1分ごとにあいうえお順に禁句(タブー)が増えていく」


つまり、使える文字が一つずつ消えていくというわけである。
全ての文字が消えるまで、45分だ。


「それ面白いよ。キミやっぱすごいね」


クックと海藤は低く笑った後、午前1時からそのルールでゲームを始めると決めた。


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