long dreamA
□領域-territory-
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指定された時間に桑原、蔵馬、飛影、未来は四次元屋敷に到着していた。
無名の芸術家が建て生活していたという、今は空き家のなんとも奇妙で個性的な外観の屋敷である。
「幻海ばあさんに相談しようと思っても出張中とはなあ。肝心な時にいねえ」
ぶつぶつ文句を言う桑原を筆頭に、皆は敷地内に足を踏み入れる。
扉には、不可解な文章が記された貼り紙があった。
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この家に入った者は決して
『あつい』と言っては
いけない。もし言えば…。
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どういう意味だろう、と顔を見合わせる桑原と未来。
「とにかく中に入ろう。気をつけて… 」
皆に注意を促す蔵馬が先頭になり、屋敷に入室する。
中はモワァッとした空気で充満しており、まるでサウナの中にいるようだ。
「何この部屋。すごく…」
蒸し暑い、と言おうとして未来は自らの口をふさいだ。
(あついって言っちゃダメなんだよね。理由は謎だけど…)
ここは貼り紙の指示に従い、慎重にいくのがベストだ。
(それと…)
未来が気になっていることは、もう一つある。
「未来も気づいたか」
飛影に問われ、こくりと未来はうなずく。
「蔵馬と桑ちゃんは?」
「ああ。入り口を入った瞬間、まるで異世界に入ったような違和感がした」
「え?オレは全然そんなの感じなかったけどな」
同意する蔵馬だが、桑原は違和感を感じとることができなかったらしい。
「やっぱり霊感が働かなくなっちまったのが原因かな…」
なぜか霊感がなくなってしまっている桑原は、頭を悩ませる。
「ようこそ」
その時、部屋の奥から盟王の制服を着用した眼鏡をかけた男が現れた。
「海藤…!?」
「あー!本屋の人!」
蔵馬と未来はそれぞれ口々に言った後、
「「知り合い?」」
声を合わせ、お互いに問う。
「高校の同級生という程度で親しくもないよ。もちろんオレのことも飛影や幽助や未来、桑原くんのことも話していない」
どうやらあの眼鏡の彼は、蔵馬のクラスメイトで海藤という名前らしい。
「未来は海藤と知り合いだったのか?」
「あの人、前に話した蟲寄市の本屋で助けてくれた人なの」
そんな恩人が幽助を拐った敵であるなどと、未来は思いたくないのだが。
「とにかく、あいつは浦飯を呼び出した三人のうちの一人だぜ!」
桑原の証言で、決定的となる。
「永瀬未来さんだっけ?後からあの本屋で偶然会った君の正体を知って驚いたよ。異世界から来たんだってね」
どうして知っているんだと動揺する未来を尻目に、海藤は間髪入れず続ける。
「南野もさァ、妖怪だったなんてビックリだよ。勉強以外にもすごい力持ってたんだな」
話題が自分に移り、眉を寄せる蔵馬。
「海藤、なぜ未来やオレのことを知っている?幽助を拐った目的はなんだ?」
「ちょっとオレにも見せてくんない?その植物をあやつるってやつ」
「質問に答えろ」
刺すような瞳で海藤を見据える、蔵馬の冷たい声が室内に響いた。
「ほらそのカオ!こわいな。学校じゃ一度も見せたことないだろ」
蔵馬をからかうような口調で言った後、質問には答えるからとことわった海藤。
「ある人が教えてくれたんだ。キミ達が暗黒武術会っていう格闘大会で優勝したこと。永瀬さんが大会の優勝商品だったこともね」
何もかも知っている海藤に、未来たちは言葉を失う。
「オレも最近自分に妙な力があることを発見してさあ。永瀬さんと会った時はまだその能力に目覚めてなかったんだけど。この力でキミ達に挑戦してみたくなったんだよ」
力試しってとこかな、と海藤は不敵に口角を上げる。
「ふざけやがって。今すぐ思い知らせてやる。貴様がどれだけ無謀な戦いを挑んでいるかをな」
それまで沈黙していた飛影の堪忍袋が切れ、剣を抜き海藤に飛びかかる。
「別にいいけど。無駄だと思うよ」
「ほざけ!」
パキィンッ
海藤が切り裂かれた音ではない。
剣が真っ二つに折れた音だ。
「ほらね」
呆気にとられ折れた剣を見つめる飛影を、海藤は嘲笑った。