long dreamA


□領域-territory-
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指定された時間に桑原、蔵馬、飛影、未来は四次元屋敷に到着していた。


無名の芸術家が建て生活していたという、今は空き家のなんとも奇妙で個性的な外観の屋敷である。


「幻海ばあさんに相談しようと思っても出張中とはなあ。肝心な時にいねえ」


ぶつぶつ文句を言う桑原を筆頭に、皆は敷地内に足を踏み入れる。


扉には、不可解な文章が記された貼り紙があった。

____________
この家に入った者は決して
『あつい』と言っては
いけない。もし言えば…。
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

どういう意味だろう、と顔を見合わせる桑原と未来。


「とにかく中に入ろう。気をつけて… 」


皆に注意を促す蔵馬が先頭になり、屋敷に入室する。


中はモワァッとした空気で充満しており、まるでサウナの中にいるようだ。


「何この部屋。すごく…」


蒸し暑い、と言おうとして未来は自らの口をふさいだ。


(あついって言っちゃダメなんだよね。理由は謎だけど…)


ここは貼り紙の指示に従い、慎重にいくのがベストだ。


(それと…)


未来が気になっていることは、もう一つある。


「未来も気づいたか」


飛影に問われ、こくりと未来はうなずく。


「蔵馬と桑ちゃんは?」


「ああ。入り口を入った瞬間、まるで異世界に入ったような違和感がした」


「え?オレは全然そんなの感じなかったけどな」


同意する蔵馬だが、桑原は違和感を感じとることができなかったらしい。


「やっぱり霊感が働かなくなっちまったのが原因かな…」


なぜか霊感がなくなってしまっている桑原は、頭を悩ませる。


「ようこそ」


その時、部屋の奥から盟王の制服を着用した眼鏡をかけた男が現れた。


「海藤…!?」
「あー!本屋の人!」


蔵馬と未来はそれぞれ口々に言った後、


「「知り合い?」」


声を合わせ、お互いに問う。


「高校の同級生という程度で親しくもないよ。もちろんオレのことも飛影や幽助や未来、桑原くんのことも話していない」


どうやらあの眼鏡の彼は、蔵馬のクラスメイトで海藤という名前らしい。


「未来は海藤と知り合いだったのか?」


「あの人、前に話した蟲寄市の本屋で助けてくれた人なの」


そんな恩人が幽助を拐った敵であるなどと、未来は思いたくないのだが。


「とにかく、あいつは浦飯を呼び出した三人のうちの一人だぜ!」


桑原の証言で、決定的となる。


「永瀬未来さんだっけ?後からあの本屋で偶然会った君の正体を知って驚いたよ。異世界から来たんだってね」


どうして知っているんだと動揺する未来を尻目に、海藤は間髪入れず続ける。


「南野もさァ、妖怪だったなんてビックリだよ。勉強以外にもすごい力持ってたんだな」


話題が自分に移り、眉を寄せる蔵馬。


「海藤、なぜ未来やオレのことを知っている?幽助を拐った目的はなんだ?」


「ちょっとオレにも見せてくんない?その植物をあやつるってやつ」


「質問に答えろ」


刺すような瞳で海藤を見据える、蔵馬の冷たい声が室内に響いた。


「ほらそのカオ!こわいな。学校じゃ一度も見せたことないだろ」


蔵馬をからかうような口調で言った後、質問には答えるからとことわった海藤。


「ある人が教えてくれたんだ。キミ達が暗黒武術会っていう格闘大会で優勝したこと。永瀬さんが大会の優勝商品だったこともね」


何もかも知っている海藤に、未来たちは言葉を失う。


「オレも最近自分に妙な力があることを発見してさあ。永瀬さんと会った時はまだその能力に目覚めてなかったんだけど。この力でキミ達に挑戦してみたくなったんだよ」


力試しってとこかな、と海藤は不敵に口角を上げる。


「ふざけやがって。今すぐ思い知らせてやる。貴様がどれだけ無謀な戦いを挑んでいるかをな」


それまで沈黙していた飛影の堪忍袋が切れ、剣を抜き海藤に飛びかかる。


「別にいいけど。無駄だと思うよ」


「ほざけ!」


パキィンッ

海藤が切り裂かれた音ではない。
剣が真っ二つに折れた音だ。


「ほらね」


呆気にとられ折れた剣を見つめる飛影を、海藤は嘲笑った。


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