long dreamA
□恋模様
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桑原が校舎を見上げ…。
「ここが蔵馬の学校だよな」
三人がたどり着いたのは盟王高校。
校門は帰宅する生徒で溢れかえっている。
ちなみに電車の乗車料金は飛影の分は桑原と未来でワリカンした。
余談だが、飛影は子供料金でいいだろうとの桑原の主張に未来も同意したのであった。
「三人で行くとかなり目立つね。私だけで蔵馬を呼んでくるよ。前に一度来たことあるから、蔵馬の教室の場所覚えてるし」
実際、学校の生徒でない三人を何者かと通り過ぎざまに見てくる視線は多い。
大人数で押しかけては蔵馬も迷惑だろうと考え、未来は一人で校舎に入ると名乗り出る。
「そっか。じゃあ任せたぞ未来ちゃん!」
「うん。いってきます!」
駆け出していった未来の背中を桑原は見送った。
「つーか飛影、久しぶりだな。一体今まで何してたんだよ?」
二人きりになり、桑原は約一ヶ月ぶりの対面となった飛影に話しかける。
「未来ちゃん、会うたびにオメーのこと心配してこぼしてたぜ。飛影はどうしてるかな、ってな」
未来の名前を桑原が出し、それまで無反応だった飛影の心が揺れる。
「ようやく今日未来ちゃんに会いに行ったんだな!なんでまた?」
「なんとなくだ。貴様には関係ないだろ」
未来にもされた質問を桑原からもされ、若干うんざりする飛影。
こういうことを聞かれると分かっていて、だけど答えられないから、ずっと会いに行かなかった。行けなかった。
だが未来は今日、“会いたい”という気持ちだけで、理由なんてなしに会ってもよいのだと言った。
仲間同士ならば。
「蔵馬でもなく、未来ちゃんに会いに行ったんだなー…。そういや裏御伽ん時も邪眼で未来ちゃんを見守ってたし…」
「…何が言いたい」
自分をまじまじと見、呟く桑原の視線にさらされ、居心地の悪さを感じる飛影。
「オレの勘は当たんだよ!単刀直入に聞くけどな!」
突然大声を張り上げた桑原を、幾人もの盟王の生徒が振り返る。
「オメー、未来ちゃんのことが好きだよな?」
今度はこそっと、飛影の耳元に手を当て小声で桑原が言った。
「なっ…」
「おっ、その反応は当たりだな!やっぱオレの勘は当たるんだよな〜!」
激しく狼狽する飛影の様子に、得意げな桑原である。
「だったらどうする!?貴様には関係ないだろ!」
弱味を握られたようで、悔しく腹立たしい飛影が怒鳴る。
(意外。否定しねーんだ…)
冷静さを欠き未来への気持ちを認めた飛影が物珍しい桑原は、目を丸くする。
そして、ピンとある考えが思い浮かんだ。
「そんな怒鳴るなよ!この桑原和真様が協力してやってもいいぜ」
「協力?」
桑原の言っている意味が分からない飛影は、眉間にしわを寄せる。
(ここで飛影に貸しを作っとくのも悪くねーな)
完全に悪巧みをしている顔になり、ニヤッと笑う桑原。
「オメーと未来ちゃんの仲を取り持つ協力をするって言ってんだよ!」
「…? くだらん。貴様の助けなどいらん」
釈然としていなかったが、とにかく桑原の協力などいらないと思った飛影はバッサリと彼の申し出を断る。
「待った待った!飛影は未来ちゃんと付き合いたくねーのか!?」
付き合うの意味を理解していないのか、未だに要領を得ない飛影の表情にしびれを切らした桑原は、
「恋人同士になるってことだよ!」
ズバリ説明した。
恋人…。
仲間という関係では満足できないのはなぜかという疑問が、飛影はその言葉で解消された気がした。
「それは相手を自分の女にするということだな?」
「お、おお、まあそういうこったな。オメーも意外と結構ダイレクトに言うのな…」
恋愛に対する純粋さ故か、恥ずかしげもなくそのようなことを口にする飛影に桑原はたじろぐ。
そうか、と飛影は思う。
(オレは)
仲間では、現状の関係では満足できない。
(オレは未来が欲しい)
未来がいて、初めて満たされると飛影は実感した。