long dreamA
□恋模様
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「せっかくなんだから、飛影も幽助たちに会いなよ」
渋る飛影を誘い、未来は幽助の家があるマンションへ足を運んでいた。
幽助と合流したら桑原の家に行き、その後に蔵馬とも連絡をとるつもりでいる。
「おい、あれはあのバカじゃないのか」
道を歩いていると飛影が立ち止まり、前方を指差した。
「え…。あ、桑ちゃん!?」
ドタドタと無我夢中で走る桑原の姿を、未来もとらえる。
「未来ちゃんに飛影!ナイスタイミングってのはこのことだぜ!」
桑原は足に急ブレーキをかけ、二人の隣でストップする。
「今ちょうど幻海ばあさん家に行って未来ちゃんに会おうとしてたとこなんだよ。とにかくコレを見てくれ!」
桑原が広げた一枚の紙切れを、飛影と未来は覗きこむ。
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今夜十一時、ろくろ首町四次元屋敷にて待
つ。何人でも可。
ただし桑原和真・飛影・蔵馬(南野秀一)・
永瀬未来の四人は必ず来ること。
この条件を守らぬ場合、浦飯幽助の命は保
証しない。
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「なにこれ…。ここに書いてあること、本当?」
顔を上げ、不安と疑惑の表情でいっぱいの未来が尋ねる。
「ああ、きっと間違いねえ!」
「まさか…。あの幽助を拐うなんて、一体どんな強者なの!?どんな妖怪!?」
仮にも幽助は暗黒武術会の優勝者である。
そんな彼を現にこうして拐うことのできる者がいたなんて、未来は容易には信じられない。
「…いや、浦飯を拐ったのは人間だ」
神妙な顔をして桑原が衝撃の事実を告げる。
「人間だと?人間にそんな真似ができるわけないだろ」
「そうだよ。幽助や桑ちゃんじゃあるまいし」
「いや!浦飯はケンカふっかけてきたあの三人に拐われちまったとしか思えねえ!」
飛影と未来は納得できずすぐには信じないが、桑原も引こうとしない。
かくかくしかじかと桑原は最後に見た幽助の姿と、その時の状況を語る。
「んで、ケンカ場所のはずである学校の裏の原っぱにこの紙と浦飯のカバンが落ちてたんだ。プーはもう家に帰らせた」
「ただの人間に幽助が拐われたなんて…。しかも相手は私たちのことも知ってる」
早く人質となった幽助を助けなければと、未来の気持ちは逸る。
「とにかく、早く蔵馬に会いに行こう」
「そうだな!二つ駅先に蔵馬の家と学校があるんだっけな!」
駅の方向へと駆け出した未来と桑原だが、数メートル先で立ち止まる。
と、いうのも。
「おい飛影、なんで来ねーんだよ!」
桑原が怒鳴るが、飛影は微動だにしない。
「行く必要がないからだ。オレには関係ない」
「なっ…」
耳を疑いたくなるような飛影のセリフに、未来は唖然とする。
「オレは頭にきてるんだぜ…。生死をかけた戦いの後にあっさり捕まるあいつのまぬけさ加減にな」
そんなバカの面倒をいちいちみてられるか、と無情にも幽助を切り捨てた飛影。
「それでも、飛影が行かないと幽助が殺されるかもしれないんだよ!?」
「知るか。あの世で後悔するだろうぜ、上には上がいたとな。武術会の優勝でいい気になっていたのが仇になったな」
「飛影のバカ!!」
言うや否や、バシッと未来が飛影の頭を叩いた。
「何するんだ貴様!」
「飛影がひどいことばっか言うからでしょ!!人でなし!!」
「あ〜も〜二人共落ち着け!」
これは珍しい。
いつもは飛影と言い争いなだめられる立場の桑原が、未来と飛影の間を取り持っている。
「飛影、行くか行かねーかはとりあえず蔵馬の意見を聞いてから決めろ!蔵馬に会うまではオレが半殺しにしてでもテメーを連れていくぜ」
ボキボキと指を鳴らし、真面目な表情の桑原が飛影に語りかける。
「半殺しだと?貴様にオレが殺せると思っているのか?」
「今聞きてーのはそんなことじゃねえ。行くか!?行かないか!?」
急く桑原に問われ、飛影は。
「…いいだろう。蔵馬に会うまでは付き合ってやる」
飛影とて、蔵馬の意見は聞いてみたかった。
仲間内で飛影が一番実力共に信頼しているのは蔵馬だ。
蔵馬には幽助のように簡単に敵の罠に嵌まらない慎重さと、逆に敵を貶める計算高さがある。
「よっしゃ、じゃあ早速駅に行くぞ!」
「桑ちゃん、ありがとね」
感情的に飛影を怒った自分に対し、冷静に彼を諭した桑原に未来は感謝する。
「別にすごかねーよ。蔵馬なら飛影を説得できると思ってよ。結局人頼みってことだ」
小声で桑原が未来に述べると、三人は駅へ急いだ。