long dreamA


□波乱の幕開け
2ページ/5ページ


未来と飛影は並んで皿屋敷市の中心部を歩いていた。


「夕食にはまだ早い時間だし…。飛影、どっか寄ってく?」


立ち並ぶ店々を眺め未来が問うが、物欲も金もない飛影に入りたい店などあるわけがない。


(飛影でも楽しめそうな場所、ないかなあ)


考える未来の視界に入ったのは、ゲームセンターの看板。


「あ、ゲーセンでも行ってみようか」


「なんだあれは」


店内から聞こえる騒々しい音と、派手な看板の装飾に飛影は眉を寄せる。


「ま、いいからいいから!絶対楽しいよ」


こうして未来は半ば強引に飛影をゲームセンターに入店させたのだった。






「まずゲームバトラーでもやってみる?」


「ゲームバトラー?」


「ほら、あのゲームだよ。今あの男の子がやってる」


未来はゲームをやっている小学生くらいの男の子の背中を示す。


「すごい、あの子強い…」


レベルが高い魔人も楽々と倒していく少年に、感嘆する未来。


「強〜い」
「すげえなあのガキ」
「あの子超強い!」


いつの間にか周りにはギャラリーが出来ており、少年の華麗なコントローラーさばきに皆が注目している。


『ゲー魔王は死んだ…。そして街に再び平和がおとずれた』


少年がゲームをクリアしエンディングまでいくと、ワッと歓声が起こる。


「いいモン見たわ〜」
「すごかったね、あの子」
「もうあっち行こうよ」


ひとしきりギャラリーは盛り上がると、それぞれバラバラに散っていく。


「すごかったあ!エンディングいくのってかなり難しいんだよ!?なのにあの子はあんなに簡単に…!」


少年の上手さに感激する未来が隣の飛影に語りかけるが、ゲームに関して無知な彼には全く伝わらない。


「あんな画面上で戦うちんけな遊びに勝ったからといって何がすごいんだ?」


おかしなものを見る目をして未来に尋ねる飛影。



「へ〜。じゃあアンタはゲームでオレに勝てるわけ?」



挑むように話しかけてきたのは、その少年だった。


(やば!聞こえてたんだ。怒らせちゃった!?)


焦る未来だが、少年に怒っている気配は欠片もない。


ゲームを馬鹿にした飛影に憤慨しているようではなく、試すような、からかうような笑みを浮かべている。


「じゃあさ、オレとこのゲームで勝負しようよ」


暇潰しになると楽しんでいる。
そんな感じだ。


「待って待って!この子、ゲームやったことないんだ。勝負にならないと思うよ」


弁解する未来に、弱い者扱いされたようでムッとした飛影はジロリと彼女をにらむ。


「こんなお遊びの何が難しいというんだ」


「いやいや初心者であの男の子に勝とうなんて無謀すぎるから!」


「じゃあお姉さんがオレと戦う?」


思わぬ少年の提案に、未来は目をパチクリさせる。


「いや、私もキミには勝てないし…」


「あのね〜、どうせオレに勝つなんて無理なの!」


「あ、うん…」


若干イライラした口調の少年に言われ、年下相手だがその通りなので肯定するしかない未来。


「ただこのゲームバトラーに対戦機能が追加されたからさ、試してみたいだけ」


従来のゲームバトラーはゲー魔人やゲー魔王のみが対戦相手だったが、最新機種は友達同士で対戦ができるモードがあるらしい。


「だからさ、お姉さん付き合ってよ!」


ワクワクした満面の笑みでそう頼まれては、未来もノーとは言えない。


「いいよ。一回だけね。飛影、私のバッグ持ってて」


未来は飛影に荷物を預けると少年の隣に座り、ゲームを開始する。


「あ、言い忘れてたけど負けた方が夕飯おごりね」


「ちょ、聞いてな…!」


既にゲームのオープニングが始まってから少年から告げられた一言に、慌てふためく未来。


年下の彼に、すっかり丸めこまれている彼女であった。


次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ