long dreamA


□波乱の幕開け
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「出張?」


朝食の席で聞き返した未来に、幻海がこくりと頷く。


「今日は隣の県まで霊相談の依頼で行くんだよ。明日の朝には帰るからね」


「出張か…。最近忙しそうですもんね」


霊能力者である幻海の元に、霊的な件で相談に来る者も多いのだ。


ここ一ヶ月は、特にその数は増えているように思える。


未来は幻海の仕事に関してはノータッチなので、相談内容について一切知らないが。


「この屋敷に夜一人って、怖いなあ。怖くて寝られないかも」


鬱蒼とした森の中にある、この広い屋敷に夜に一人残されると思うと未来は身震いした。


「蔵馬でも連れこめばいいじゃないか。別に止めやしないよ」


「ちょ、何言ってるんですか師範!」


幻海らしからぬ発言に、未来は動揺を隠せない。


「おや、まだそんな仲じゃなかったのかい?よく二人で会ってるらしいから、てっきりね」


「それはただ一緒に勉強をしたり、教えてもらったりしてるだけで…。付き合ってるわけじゃないですよ」


約一ヶ月前のあのデートの日以来、未来と蔵馬はしばしば幻海邸や図書館で勉強していた。


蔵馬は相変わらず優しいし、質問には丁寧に答えてくれるので、未来はとても感謝している。


「なんだ。つまらないね」


「つまらないって…」


味噌汁をすすりながらの幻海の吐いて捨てたような呟きに、未来はどう反応したらよいのか分からないのであった。




・・・・




夕方。

(今日の晩御飯どうしようかな〜)


幻海は出掛け、屋敷に残された未来。


いつも幻海と二人分の食事を作っていた未来は、一人分のために台所に立つのが億劫になっていた。


(よし!今日は外食だ!)


どこかの店で食べるか、お惣菜でも買ってこようと決めた未来。


荷物をまとめ戸締まりをし、外出しようと颯爽と幻海邸の門をくぐる。


その時、ガサッと木の葉がすれる音が鳴り、未来が頭上を見上げると…。



「飛影!」



高い木の枝の上に立っている彼の姿を見つけ、未来は叫ぶ。


「久しぶり!どうしたの!?全然会いにきてくれないからさ〜。元気だった?」


暗黒武術会以来の飛影と会えた喜びに、未来は顔をほころばせる。


そんな彼女の反応が飛影は内心嬉しいのだが、素直にそれを表現することはできない。


「そうだ飛影、一緒にご飯食べに行こうよ。今から私、皿屋敷市内に行こうとしてたの」


未来からの誘いを、飛影が断る理由もなく。


「付き合ってやらんこともない」


「じゃあ決定!よかった、一人でご飯は寂しいもん」


ふふ、と本当に嬉しそうに柔らかく笑った未来の顔を見るのがなんだか落ち着かなくて、 飛影は彼女から目をそらしたのだった。


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