long dreamA
□南野家へGO!
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蔵馬の家があるのは、皿屋敷から二つほど先の駅周辺。
電車を降りた幽助と未来は、待ち合わせ場所である駅前の噴水で蔵馬の姿を見つけた。
やはり多くの人が行き交う中、蔵馬が立つ様はそこだけ空気の色が違うように華やいでいるし、なにより目立つ。
「蔵馬〜!」
「おっす」
「未来、幽助」
合流した三人は早速蔵馬の家へ向かった。
・・・・
「おじゃましまーす」
住宅街の中のごく普通の一軒家に掲げられた“南野”の表札。
蔵馬の家に訪問した未来らは、彼の母親である志保利に迎えられた。
「未来ちゃんと幽助くんね。いらっしゃい」
「こんにちは。これ、幽助と私からです」
「まあ、ありがとう!ゆっくりしてってね」
志保利に買ってきた菓子包みを渡すと、未来は蔵馬に案内され二階の彼の部屋へ入る。
「わあ、やっぱり綺麗にしてるね〜」
「予想通りで面白味がねーわ」
整理整頓された本棚、埃一つ落ちてない床。
非の打ち所がない部屋とはまさにこのことだろう。
未来と幽助は興味津々で蔵馬の部屋を眺め回す。
「二人が来るから片付けたんだよ。お茶とか持ってくるから、そこらへん座ってて」
蔵馬が部屋を去り未来はすとんと床に腰をおろしたが、幽助は何やらベッドの下を覗いている。
「…? 何してんの幽助」
「いや、エロ本とか隠してないかな〜と思ってさ」
さらりと出た幽助の発言に、未来は大いに動揺した。
「なっ…蔵馬がそんなもの持ってるわけないじゃん!!」
というより、持っていてなどほしくない。
そんな蔵馬なんて、未来には想像できなかった。
「甘いぜ未来。アイツも男だ」
「でもでも蔵馬はそんなもの見ないもん!」
ニヤニヤ笑う年下のはずの幽助が、今日はやけに大人びて見える。
男だ、と言われては女の未来はそういうものなのだろうか…と思ってしまい、反論が難しい。
「未来は机と壁の間とか見てみろ。隙間に隠してる可能性もあるからな」
「あるはずがないでしょ。幽助じゃあるまいし」
「オレじゃあるまいし…ってどういう意味だそれ!」
「そっくりそのままの意味です〜」
幽助にはそう言い返したが、やけに隠し場所にはもってこいであろうその隙間が気になってしまう。
(いや…蔵馬にかぎってまさか…)
ありえない、と思いつつ未来の視線はその一点に。
(別に探してるわけじゃなくて、ないってことを確かめるためにですね…)
自分の行為を正当化しつつ、未来は覗いてみたいという衝動に従う。
「何してるんですか?二人共」
ギクゥッ!
突如背後からした声に、幽助と未来の肩はとび跳ねた。
紅茶と菓子を一階から運んできた蔵馬の目に映ったのは、もう一度ベッド下を確認する幽助と隙間を覗く未来。
「エロ系のものがないかチェックだ、チェック」
冷や汗を流す未来とは反対に幽助は全く悪びれる様子をみせず、あっさりと白状する。
「…生憎だけど、いくら探しても目当てのものは出てこないよ」
「ちっ違うの蔵馬!私は疑ってたんじゃなくて、蔵馬の身の潔白を証明しようとしてたの!」
両手を顔の前でぶんぶん振り、苦しい言い訳をする未来。
彼女の主張はよく分からなかったが、あたふたする様子が可笑しくて蔵馬はクスッと笑う。
「まあいいよ幽助も未来も。これ持ってきたし食べて」
菓子の中には未来たちが手土産として持ってきたものも含まれていた。
「よかったな〜未来!オメーの思惑通り買った菓子が食べられて!」
「ちょ…別に私これ買った時、自分も食べたいなんて言ってないよね!?蔵馬に誤解されるじゃん!」
「似たようなことは言ってただろ」
幽助にからかわれ、未来が反発するのは桑原&飛影の言い争いと同じく毎度の光景だ。
(うわ〜ん、めっちゃ食い意地はった人みたいになってる)
蔵馬の前で暴露され、恥ずかしさで彼の顔が見れない未来なのだった。