long dreamA


□abyss
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霊界のコエンマの自室にて。


「六遊怪戦で未来のいた世界が見つかりそうだと言ったが、実はもう見つかったのだ」


「―!」


座椅子に腰をおろした赤ちゃん姿のコエンマがそう切り出し、未来の心臓がドクンとはねた。


見つかった。
ということはもう自分の世界に帰れる日も近いのだ。


(もうすぐ帰れる…)


喜びやら寂しさやら色々な感情がごちゃ混ぜになって未来を襲う。


「正直言ってこんなに早く見つかるとは思っていなかったぞ。軽く2、3年はかかると見込んでいた」


「よかったですねえ未来さん!」


コエンマにうなずきながら、涙ぐんだジョルジュ早乙女が未来を祝福する。


「ほんと霊界の方たちには感謝しています…。あの、どういった手順で私は帰るんですか?」


「うむ。説明しよう」


コエンマの説明はこうだ。


まず霊界特防隊が未来がいた世界へと繋がる小さな穴をあける。

未来がいた世界へ移動することは常人には到底不可能なこと。

しかしあらゆる結界を通りぬけられる未来ならば、霊界が小さな穴をあけきっかけを作れば移動が可能だろうという計算だ。

そもそも未来はなんの力も借りずにこの世界に来たのだし、計画は十二分に成功するといえる。


「その小さな穴をあけるのにも一苦労でな…。一定量の大きなエネルギーがいるのだ」


魔界と人間界を繋ぐ穴をあけるのとはワケが違う。

例えるなら鉄製の扉にヘアピンで穴をあけようとするようなものだ、とコエンマは言う。


どれだけ未来がいた世界への移動が困難かを物語っている。


「エネルギーは霊界の者全員で未来がこの世界に来てからの3ヶ月の間に貯めてきた。これを使ってな」


「お、おしゃぶり?」


コエンマが自分の口元をさし、まさかと驚愕する未来。


「そうだ。おしゃぶりに霊気を凝縮し貯めておるのだ」


たしかに、今日この部屋に来るまでにすれ違った霊界の者たちは皆おしゃぶりをつけていた。


コエンマの前例があるため、これも霊界の風習かと自己解決して未来は特に疑問に思わなかったが。


「あれ?でもジョルジュ早乙女さんはつけてませんよね?」


「さっきまで人間界にいましたからね。おしゃぶりなんて恥ずかしいですよぉ。ジョルジュ的にNGです」


「ジョルジュ…それはワシに言っておるのか?」


年がら年中おしゃぶりをしているコエンマにジロリと睨まれ、ハッとし青ざめるジョルジュ早乙女である。


「ま、わかったら未来はホテルに戻れ。まだ心の準備もできてなかっただろうし、帰還は数日後にしよう。ワシは死者の審判をやらねばいかんからな」


パッパと機械的に書類に判子を押し続けるコエンマ。


実は先ほどから、未来に説明しながら仕事をこなしていたのだ。


(私が霊界に来た意味って…時間を省くためか)


コエンマの都合で霊界に連れてこられたのはなんとも癪にさわったが、気を取り直し未来は退室しようとドアノブに手をかけた。


「失礼しま…」


ドアを開けたのと同時にぬっと現れた大男の姿に、未来は言葉を失う。


「来たか、戸愚呂」


コエンマはといえば、戸愚呂がここへ来ることを予期していたらしい。


戸愚呂がここへ来た理由が知りたかった未来は、ドアをパタンと後ろ手に閉め部屋に残った。


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