long dreamA
□懸け×命×賭け
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「それではいよいよ、戸愚呂弟選手対浦飯選手の試合を開始します!」
小兎が宣言し、場内は水をうったように静まりかえる。
注目の一戦に、観客たちは皆ごくりと生唾を飲み込んだ。
「第四試合を始める前にかけをしたい。もちろん私は戸愚呂が勝つ方にかける」
その時、マイクを持った左京がリング近くに躍り出た。
「かけるものは私の命だ」
「この試合を事実上の優勝決定戦とするってこと?」
神妙な顔つきの未来が左京に問う。
「その通り。未来さん、我々は観客を満足させるだけの武力は持ち合わせてないだろう?かけにのる気はないかい?」
つまり幽助と戸愚呂の試合において、勝った方に5試合目の分も含めて2勝を与えることを左京は提案しているのだ。
「…わかった。私の命を幽助の勝ちにかける」
しばらく考え込むようにしていた未来だったが、迷いのない表情でキッパリと言い切った。
これまで幽助たちは命をかけて戦ってきたのだ。
それは優勝商品となった未来のためでもあって…
どんな形であれ未来はそれに少しでもこたえたかった。
「未来…!」
「ってことだから、幽助、絶対勝ってもらわないと困るよ!」
躊躇する幽助に、ニッと未来は笑う。
プレッシャーを与えるような言葉の中にも、未来の幽助への信頼がにじみ出ていた。
「何か問題ある?幽助は勝てるよ」
確証なんてあるわけじゃない。
だけど勝てると思いたい。
ほかの誰より幽助に、未来は勝利を信じて試合に挑んでほしかった。
「…んなことオメーに言われなくてもわかってら!」
勝てる。勝ってみせる。
未来からの信頼を感じた幽助は、リングへと一歩ずつ足を進ませる。
「ぜってー勝つから。まかせとけ」
背中ごしに呟いた幽助に、見えないとわかっていても未来はこくりとうなずいた。
「話はまとまったね。ところで未来さん、君に話があるんだ。場所を移したい」
「え?」
思わぬ左京からの申し出に、眉を寄せる未来。
「はあ?何言ってんだテメーは!」
「ああ、未来さんが心配なら誰か付き添ってもかまわないよ」
噛みついた桑原に、涼しい顔で左京が告げる。
「何を考えている左京」
「貴様が未来に話すことなど何もないだろう」
「よ〜しわかった!ワシが未来に付き添うから、それで文句はないな?」
訝しげな視線を左京に向ける蔵馬と飛影を諭し、コエンマが提案した。
「ただ話を聞いてくるだけだ。な?」
「さすが霊界の統治者。物分かりがいい。さあこちらへ」
まだ納得のいかない表情をしている桑原らを残し、コエンマと未来は左京についていき会場を出ていった。
同時に、樹里の試合始めの合図の掛け声が聞こえた。