long dreamA
□莫逆盟友
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決勝戦中断から5時間後、ついに試合が再開された。
飛影も先ほど眠りから覚め、まだ眠そうな目をこすっている。
「よっしゃあ!やったるで!」
健康第一と印字された特攻服のポケットから試しの剣を取り出した桑原は、ずんずんと勇ましくリングに向かって進んでいく。
だが、あの恐ろしい戸愚呂兄とこれから戦うという恐怖と不安はあった。
「おい大丈夫か!?顔色がすぐれんぞ」
「てめーに言われたくねー」
戦わなくてよいという喜びのオーラに包まれたコエンマに心配され、イラッとする桑原。
(桑ちゃんが無事でありますように…!)
ギュっと目を瞑り手を組んだ未来はひたすら祈る。
「始め!」
樹里から合図が出たとたん、先手必勝とばかりに、桑原は試しの剣を発動させる。
「桑原くんの驚異的な回復力をさらに高めている。剣に使う霊気も数段強い…まさに攻防一体の武器だ」
「ナイス鈴木!ってことだね」
「…まあ間違ってはないかな」
蔵馬の解説をなんとも軽い一言でまとめた未来。
「おりゃあーー!」
桑原に剣を振り上げられながらも、戸愚呂兄は全く避ける素振りをみせない。
そのまま真っ二つに切り裂かれてしまった。
「え…もう勝っちまったのか?」
あっけなくついた勝負に、当事者の桑原のみならず会場中が困惑する。
その時、幽助が桑原の背後の地中から何か触手のようなものが生えてきたのに気づいた。
「桑原!後ろだー!」
幽助が叫ぶも間に合わず、桑原の身体は数本の槍のようなソレに貫かれてしまう。
「桑ちゃんっ…」
串刺しにされた桑原の姿に、未来が悲鳴をあげた。
「お前ほど単純だと騙すオレも気分がいいよ」
ボコッと地中から出てきた戸愚呂兄。
桑原を刺した触手の正体は、長く鋭く伸びた戸愚呂兄の指だった。
「な…なに〜奴が二人!?」
倒れる桑原を、クククと戸愚呂兄は嘲笑う。
「お前が斬ったのはオレの体で作ったダミーさ。痛みは感じるが今のお前ほどじゃない」
姿形はおろか内臓の位置も自在に移動させることができる戸愚呂兄の能力。
それを彼は用い、リングの下をドリルで削って足の裏から本体を桑原の背後へ移動させたのだった。