long dreamA
□DARK BLAZE
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抱き合う蔵馬と未来。
(蔵馬…よかった…)
蔵馬に抱きしめられ、未来はひしひしと彼が生きている喜びに浸る。
涙も落ち着き、水滴が草木に残る雨粒のように彼女の睫毛を彩った。
(やっぱり、蔵馬は安心するよ…)
蔵馬からは、いつかの薔薇の香りがした。
審判は平等でなければならず、どちらかのチームに感情移入すべきでない。
そう樹里は思うのだが、蔵馬と未来の姿に不覚にも感動し、思わず涙目で黙ってふたりを見守っていた。
よかったですね、と浦飯チームに声をかけたくなる。
しかし審判としての務めを果たさねばと、樹里はマイクを今一度強く握り、試合終了の宣言のためすうっと息を吸った。
それと蔵馬が未来から体を離したのは、ほぼ同時だった。
「すまない。奴を倒すだけで精一杯だった」
そう幽助たちを見上げ謝って。
「試合終了!鴉選手の勝利です!」
「なにっ!」
「蔵馬は鴉をぶっ倒したじゃねーか!」
「どういうこと…!?」
コエンマ、幽助、未来は樹里のアナウンスに納得できない。
「蔵馬選手はダウンした状態から反撃しましたが、攻撃をしたのは私が10カウントを数えた後だったのです!」
会場に備え付けられている大画面のモニターで確認VTRが再生されるが、確かに蔵馬の攻撃はダウンの11秒後だった。
「10カウントダウンだと〜!?」
「そういうことだ」
幽助に肩をかしてもらいながら、蔵馬が目をふせる。
「蔵馬が生きていてさえくれれば、それで十分だよ」
「試合に負けて勝負に勝った、というやつだな」
ウンウンと未来にうなずくコエンマ。
「わかってないな」
穏やかな空気の浦飯チームに横槍を入れたのは、弟の肩に乗る戸愚呂兄だ。
「優勝チームにはメンバーそれぞれに褒美が与えられる。オレの望みを教えてやろう。お前ら全員の死だ」
戸愚呂兄は幽助たちがまるで虫か何かのように、ひどく見下した視線をおくる。
「鴉は殺すつもりだったようだが…未来だけは生かしておいてやってもいいな」
戸愚呂兄は未来の全身を下から上まで舐めるように見ると、じゅるっといやらしい音をたてて舌なめずりをした。
幽助たちはそんな戸愚呂兄を睨みつける。
戸愚呂弟は無表情を保ち、笑っているのは左京と戸愚呂兄だけだった。
鎧に隠れた武威の表情はうかがえない。