long dreamA
□決戦のとき
2ページ/4ページ
「ちょっと待った!幻海選手がいる以上、補欠との交代は認められませんよ」
「かまわんさ。誰でもいい、とにかく5人選手を揃えればよいことにしよう。大会本部の責任者である私がルール変更を認める」
本部の人間である左京に言われては、審判樹里も黙ってうなずくしかない。
突如助っ人として現れたコエンマを見、口をひらいたのは鴉。
「見たところほとんど霊気も感じない。お飾りの人数合わせといったところか」
「ふ…よくぞ見抜いた」
「なんでいばってんですか」
貶されているにもかかわらず胸を張るコエンマに未来はツッコむ。
「…審判。桑原くんが来ないまま浦飯チームが優勝した場合、彼の望みはどうなるんだ?」
「え〜…桑原選手は準決勝まで皆勤で出場していますから、望みを叶える権利はありますね!」
蔵馬に尋ねられ、パラパラとルール本をめくると樹里が答えた。
(よかった…万が一、ということもある)
魔性使い戦後の左京主催の“ゲーム”に伴い、蔵馬と桑原は鈴駒と酎の命を背負っている身。
もちろん蔵馬は勝つつもりだ。
妖狐の姿に戻り、鴉に勝利する絶対的な自信をつけている。
だがもしも自分が死んでしまった場合は、桑原に彼らの命を託すしかなかった。
「なんだよ蔵馬、優勝するつもりか!?」
「生意気言ってんじゃねー!」
優勝前提で話をした蔵馬に、観客達は怒号をとばす。
「とりあえず、桑原選手がこのまま戻らなかった場合を考えて、彼の代わりの人を決めてもらえませんか?」
浦飯チームに頼む樹里。
「…よし。私が桑ちゃんの代わりをやるよ」
決心した未来がぐっと気合いをいれるように拳を握った。
「はあ!?何考えてんだ未来!オメーが戦えるわけねーだろ!」
ムチャ言うな、と幽助が止め、蔵馬も思わぬ未来の申し出に目を丸くし驚いている。
「問題ない。オレと蔵馬、幽助で3勝すればいいだけの話だろ」
負ける可能性など微塵も感じていない飛影は、顔色ひとつ変えない。
「だって早く人数を揃えなきゃいけないし、この場にいる私が桑ちゃんの代わりをやった方が手っ取り早いよ。裏御伽戦の時と同じように桑ちゃんがわりとすぐに帰ってくることを期待しよう」
未来が言うも、幽助と蔵馬はまだ腑に落ちない表情をしている。
もし未来が武威だの戸愚呂兄だのと戦うはめになったらと思うと、うなずくことはできない。
「よし、左京との相手は未来に譲ろう。ワシが桑原の代わりを、未来には幻海の代わりをやってもらう」
まあ試合がまわってくることはないだろうと、高をくくっているコエンマが男をみせた。
「…言ったなコエンマ。男に二言はねーぞ」
カッコつけたいがために言ったのではないか、と疑う幽助はコエンマに念を押す。
やっと出場メンバーが決まり、審判である樹里もひと安心だ。
「了解です!では浦飯チームの5人目の選手は未来さんに変更ですね!」
こうして幽助、未来、蔵馬、飛影、コエンマの新生浦飯チームが誕生した。
コエンマは桑原が戻るまでの代理なので、メンバーを降りる可能性は十分あるが。
「ハハッ優勝商品が選手として出場かよ!」
「しかも5人目ってことは大将じゃねーか!」
「な〜んか面白くなってきたんじゃね!?」
観客の妖怪達は予期せぬ未来の決勝戦参加に興奮し、盛り上がっている。