long dreamA


□トリートメントはしているか
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螢子と別れ、ほか10名は浦飯チームの部屋に来ていた。


皆が昼食を終えた後も、幽助はいまだ寝続けている。


「あさってにゃ決勝だってのによ、ホントに大丈夫かコイツ」


呆れ顔で爆睡する幽助を見る桑原。


「人のことより自分の心配したら?」


「殺すぞテメー」


飛影ポジションを務める鈴駒である。


「寝かしときな。その時になりゃイヤでも起きてくるさ。それはそいつが一番よく分かってる」


(その時って、決勝戦のことだよね…)


幻海の言葉を未来は反芻する。


とうとうここまできたんだ、という感慨と緊張感があった。


もうすぐ、あの戸愚呂と対戦することになるのだ。


「幻海師範、今まで幽助は何をしていたんですか?」


「霊光波動拳の奥義を継承するための試練を受けていたんだよ。相当な痛みに耐えたはずだ。よくやったよ」


珍しく幻海が幽助を褒め、未来は意外だった。


それだけ幽助が大それたことをしたということだろうか。


(幽助、すごくすごく頑張ったんだ)


未来は二ヶ月前、幽助と共に戸愚呂と対峙し暗黒武術会へ招待された日を回想する。


戸愚呂に脅えるしかなかったあの時より、今の幽助は何倍も成長しているのだ、きっと。


「さてと…」


床に座っていた幻海が立ち上がる。


「どこ行くんだよ!?二戦したばっかだぜ、バーサンこそ寝とけよ」


「…大事な用があってな」


桑原が止めるも、幻海は神妙な顔でそう言った。


(大事な用…?)


「未来」


疑問符を浮かべる未来の名を幻海が呼んだ。


「あんたは自分が優勝商品だ、という話題になった時は特に“私なんか”と言っていたが、そうやって自分を下げるのはやめな。自分で自分の価値を下げるんじゃないよ。いいことないからね」


「え…は、はい。わかりました」


突然の幻海のセリフに戸惑いつつも、未来は返事をする。


「桑原、負けるんじゃないよ。蔵馬、飛影。奴らの試合をよく見ておけ」


幻海はそう言い残し、部屋を後にした。


「どうしたんだ、バーサン。いきなり」


「さあ…」


桑原も未来も、何かを覚悟し決心したような幻海の表情と、先程の一連の発言が気になった。


「師範、なんで突然私にあんなこと言ったんだろ」


「きっと師範は未来にもっと自信を持っていい、持ってほしい、と言いたかったんですよ」


幻海の気持ちを蔵馬が代弁する。


(もっと自信を…)


痛いところをつかれたようで、幻海の言葉が身にしみる。


たしかに未来は、自分はたいした人間ではない、といった主旨の発言をしたり思ったりすることが多かった。


(でも、師範がもっと自信を持っていいって思ってくれてたなら、嬉しい)


それだけで、未来は幻海から太鼓判を押されたようで自信がわいてくる。


「じゃあオレはもうすぐしたら、幻海師範の言う通り戸愚呂チームの試合を観に行こうかな」


「あ、私も行きたい。一緒に偵察に行こう」


蔵馬と未来は観戦の約束をした。


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