long dreamA
□美しい魔闘家鈴木
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「ほっほっほ。決勝までに死々若丸くらいは残ると思っていたが…」
ついに裏御伽チームの選手は残すところあと一人となった。
それにもかかわらず、怨爺は余裕な表情で浦飯チームの分だけのサイコロをふった。
出たのは“覆面”の目。
「あんな爺さんで大丈夫なのかよ!?」
「ジジイとババアのデスマッチなんか見たかねーぞ!」
観客たちはあまり怨爺に期待していないようだ。
「待ったァー!!」
その時、闘技場に飛び込んできた漢が一人。
「桑ちゃん!?世界の果てまでイッテQしてきたんじゃなかったの!?ま、まあ無事でよかった…」
あまりにも早い桑原の帰還に、未来は驚く。
「さっきの試合じゃ納得できねぇ!次の試合はオレがやるぜ!」
なにがなんだか分からないうちに死出の羽衣で消された桑原は、次こそは!と気合いをいれている。
「桑ちゃん、おかえり。だけどもう幻海師範が試合に出るって決まっちゃってるよ…」
「ただいま〜ってえ!?幻海の婆さん!?」
申し訳なさそうに未来が言い、桑原がリングに目をやると、既に幻海と怨爺は向かいあっていた。
「いい加減そのジジィ言葉と変装をやめたらどうだい?どこの誰だか知らないが、年寄りのかっこで油断させようってなら相手が悪いよ」
「変装…!?」
幻海が怨爺に言い放った言葉に、会場中がざわつく。
「腐っても鯛か。よく見破った。妖気の波長も変えていたのにな…。いいだろう。お初にお目にかける」
怨爺が自分の顔に手をやり、その仮面を取っていく。
「老人に変装したわけは、年寄りは私の最も嫌いな生き物だからだ。最も嫌いなものに化けることで自らの闘争心をさらに高めた。老いは醜い!もはやこれは罪だ」
ボン!と怨爺がいた辺りが煙に包まれ…
「そうなる前に私は死のうと思う。美しいままで」
現れたのは、ピエロの姿をした若い男性だった。
「エーー!!」
裏御伽チームに潜入中、おじいさんとして接して親しみすら感じていた怨爺のまさかの正体に、未来は開いた口がふさがらない。
「私が主役の恐怖神話を作る!この大会の優勝はその伝説の第一歩となる!お前たちは伝説の証人となる。この大会の目撃者すべてに私の伝説の語り部となってもらおう」
「くだらん野郎だ」
飛影がごもっともな一言を呟いた。
「自己紹介が遅れたな…。私は千の姿と千の技を持つ、美しい魔闘家鈴木!!美しい魔闘家鈴木だ!!」
大事なことなので二回言った鈴木。
「私のことを人にしゃべる時、名前の前に“美しい”をつけるのを忘れるな」
なんじゃそら、と会場中が鈴木…じゃなくて美しい魔闘家鈴木にドン引きしている。