long dreamA
□死出の羽衣
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「未来ちゃんはちっちゃい頃も可愛かったな〜」
桑原がリングから降りてきた未来を褒める。
「ほんと〜?でも蔵馬の小さい頃の方が私より断然可愛かったよっ!もうキュンキュンしちゃった!私が今まで見てきた赤ちゃんの中でダントツの可愛さ!」
「……」
熱く語る未来に、複雑な心境の蔵馬である。
「おいそんなくだらん話をしている場合か。サイが振られるぞ」
ごもっともな飛影のセリフに、未来達は死々若丸の手から放たれたサイコロに注目する。
出た目は“自由”と“死々若丸”。
「さあ誰だ?最初に死ぬのは」
強気な死々若丸が浦飯チームの男三人に向かって言う。
「真打ち登場だぜ!」
「死々若〜!一矢を報いろ〜!」
裏御伽チームの星、死々若丸に観客達も期待十分だ。
その時。
バッ
ガサッ
会場の至るところから現れた段幕と、そして…
「キャーー!!若様ーー!」
耳をつんざくような女性たちの歓声。
「な、何事…!?」
異様な会場の光景に、未来は興味深そうに辺りを見回す。
視界に入るのは、死々若丸命、若様LOVE…そんな文字ばかり。
気合いの入った段幕に、未来の目はチカチカする。
「キャー!若様がんばってー!」
「浦飯Tなんか殺ってちょうだーい!」
「若様愛してるー!」
やっとまわってきた死々若丸の出番に、彼のファンは精一杯の応援をする。
「すごい…暗黒武術会とは思えないね。ジャニーズのコンサートが始まるみたい」
圧倒される未来は、裏御伽チームに潜入した際、彼のファンに遭遇したことを思い出す。
(あの時もファンの女の子たちにはびっくりしたけど、今の方が迫力がある…)
恐るべしファンパワー&死々若丸のモテ男ぶり、である。
「あ でも蔵馬は殺さないでほしいー!」
「あ〜浮気者!」
(蔵馬もモテてるじゃん!)
未来は蔵馬を冷やかそうとしたが、
「あんな男女より、若様の方が断然魅力的よぉ!」
オトコオンナ。
ファンの女の子のひとりから出た単語に、蔵馬がまとうオーラが黒く変化したのを感じた。
(い、今のは聞かなかったことにしよう…)
蔵馬の顔を見るのが恐くて、未来はゆっくりと彼から視線を外す。
「うるせーな、浮かれ女どもが。闘いの場をなんと心得てやがるんだ、まったく」
不機嫌そうな桑原が会場を見渡すというより睨んでいると、
「おい そこの失敗ヅラ」
すっと死々若丸が彼に向かって指をさした。
「次の試合、お前が出たらどうだ?ただ立っているだけではヒマだろう」
「なっ…誰が失敗ヅラだ コラァ!」
失礼きわまりない発言をした死々若丸に桑原は噛みつく。
「うまいな」
「敵ながら、的確な表現だ」
「座布団一枚あげたい!」
「オメーらも何言ってんだコラァ!!」
飛影、蔵馬、未来…彼らもまた、死々若丸に便乗するのであった。