long dreamA
□想い
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押し倒された未来の左頬に、す…とのばされた死々若丸の右手。
未来はぎゅ、と目をつむる。
「!! いたっ!」
与えられた刺激は予想していたものと違っていた。
「にゃ、にゃにする…」
ぐい〜と引っ張られる頬の痛みに、未来は顔をしかめる。
「オレが貴様なんか相手にすると思ったか、バカ女」
死々若丸はそう言うと、パッとつねっていた未来の頬から手を離した。
「え」
ジンジン痛む赤くなった頬を撫でながら、拍子抜けする未来。
「何を期待していたのか知らんが、実に笑い者だな」
死々若丸が、ぶるぶる震えていた未来をバカにして笑う。
「期待なんてしてな…!変な言い方しないでよ!」
なんでこちらが恥ずかしい気持ちにならなければならないのか。
未来の涙はすっかり乾いていく。
「自分の身の程をわきまえるんだな。何も反論せんから少しは賢いのかと思ったが、案の定、奴等に逆らって。やはりバカだったか」
ベッドから離れ、立ち上がる死々若丸。
「さっさと出てけ、バカ女」
「バ…バカバカ言いすぎ…!」
恐怖感で占領されていた先程とは一転、未来の心の中は想定外の事態への動揺と、暴言を重ねる死々若丸への怒りで占められる。
未来は体を起こすとベッドから降り、力が入りきらない足でよろよろと部屋のドアまで歩いていく。
「のろい。邪魔だから早くしろ」
「……」
(むっか〜…)
苛ついた死々若丸の声を背に、未来は905号室をあとにした。
・・・・
「はあ…」
廊下に出た未来はすぐには進まず、部屋の前でぽ〜とした顔で立ちつくす。
黒桃太郎らに襲われ、魔金太郎は重傷を負い、今度は死々若丸に襲われたと思ったら暴言を吐かれて突き放され…
この数分間で色々なことが起こりすぎていた。
バタバタバタ…
彼女の元へ走る三人の足音。
ゆっくり未来はそちらに顔を向けた。
「未来!大丈夫か!?」
心ここにあらずな表情をしている未来を心配する蔵馬。
「無事だったみたいでよかったぜ…!つーか一体、何があったんだ?」
ほっと安心のため息をつく桑原だが、ひとつの疑問が生じる。
彼と蔵馬は突然血相を変えて走りだした飛影の様子から、未来に何かあったのだと悟っただけであり、詳細は知らなかった。
「奴等はこの中か」
部屋のドアをぶち壊し、中に入ろうとした飛影を見て未来はハッとする。
「待って飛影!黒桃太郎とかは部屋にはいないし…!」
未来が殺意に燃える飛影を止めた。