long dreamA
□邪眼師飛影
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飛影が見ている邪眼の先では…
「あ〜うまかったな。あとはデザートだけか」
たらふく食べて腹が膨れた裏浦島である。
「おいしかったあ〜」
「ほっほっ。それはよかった」
満足気な未来の言葉に、孫が喜んで嬉しいおじいちゃんの図をアピールをする怨爺。
六人はあまり会話もなく、誰かがうまいと呟く以外は無言で黙々と料理を食し、デザートまでたいらげていた。
(浦飯チームは仲良いけど、裏御伽チームはそうでもないのかな?)
口を拭きながら未来は考える。
「おい、早く次の料理持ってこいよ!」
黒桃太郎が近くの他の妖怪の客がいた机を蹴りとばし、ウェイターを急かした。
机にのっていた料理皿が床にぶちまけられる。
「も、申し訳ございません」
ウェイターは黒桃太郎に怯え、デザートを早く用意すべく厨房へ伝えに急ぐ。
ほかのウェイターたち数人がこぼれた料理を片付けようと集まった。
料理をぶちまけられた妖怪も、黒桃太郎が恐くて何も言い返せない。
(せっかちな人。まだ全然待たされてないじゃない。料理も無駄にして…もったいないよ)
未来は傍若無人な黒桃太郎の態度に、心底不快になった。
先程も自分を…未来をたいしたことがなければ殺せばいいというセリフを魔金太郎の方は吐いていたし、彼らにはまったくと言っていいほど良いイメージを持っていない。
「手伝いましょうか?」
「いいですよ!お客様の手を煩わせるわけにはいきません」
片付けの手伝いを申し出た未来だが、ウェイターは丁重に断る。
「にしてもよ、本当に浦飯チームの奴等は正義の味方気取りか!って感じだよな」
そんな未来の言動を見た魔金太郎が、げふ、とゲップをして気にくわなそうに言った。
「正義…オレの最も嫌いなものだ」
死々若丸が続ける。
(正義…? 幽助たちが?)
未来の頭を巡るのは、これまで見てきた不良・幽助の姿。
あまりにも正義とは不釣り合いで、プッと未来は吹き出す。
「あ? 何がおかしい」
「いや、別に…」
魔金太郎ににらまれ、まだ口元は笑ったままの未来が応える。
「でもよ、一人だけ場違いな奴がいるぜ」
ある人物を思い浮かべ、ニヤニヤ笑うのは黒桃太郎だ。
「飛影な!あいつはワルだぜ」
魔金太郎が黒桃太郎に同意する。
(飛影か…)
たしかに、皆殺し、などという恐ろしい言葉も平気で口にする飛影だ。
正義とはほど遠いよなあ、と未来は思う。
そして、なるべく忘れようとしていた飛影とギクシャクしている事実も思い出してしまった。
その事実は、未来の心にずっしりと重くのしかかる。
(考えないようにしてたのに…やなこと思いだしちゃったじゃん。まあ、飛影は“正義”じゃないよね。浦飯チームの中で一番正義とは遠いかも。近いのは桑ちゃんかな?)
「そーそー、なんであんな奴が浦飯チームにいるのか不思議だぜ」
「あいつもオレらと同じだ。ただの悪党妖怪な!」
カラカラと下品に黒桃太郎と魔金太郎は笑う。
その言葉に、今まで彼らが何を言っても口答えせず黙っていた未来が眉を寄せ、反応をみせる。
「同じ…?」
「そ。飛影もオレ達、ワル妖怪と同じよ」
当然だ、という表情の黒桃太郎。