long dreamA
□邪眼師飛影
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ところかわって、404号室。
「飛影!今、未来ちゃんと奴等は何してんだ?」
未来を心配し、急かすように桑原が尋ねる。
「最上階で飯を食っている」
「飯ィ!? のん気な奴等だな…」
飛影の返答に、意外そうな表情の桑原。
(メインディッシュはオレ達だと?ふざけるな。明日死ぬのは貴様らの方だぜ…)
黒桃太郎の発言を聞いていた飛影である。
「蔵馬、未来ちゃんに渡した植物ってどういうものなんだ?」
思い出したように桑原が蔵馬に問う。
「敵だとみなした者に攻撃する、魔界の水芭蕉ですよ。水芭蕉は、未来のことは既に主人だと認識している」
蔵馬はもう一つ持っていた魔界の水芭蕉を、桑原の前に出してみせた。
今はまだ発芽していない状態だ。
「コレってどんな植物なんだ?」
「樹液に触れると炎症やかぶれ、かゆみを起こす植物です」
その葉からは、かゆみの原因であるシュウ酸カルシウムを含む汁が分泌されるという。
「まあ、魔界の水芭蕉は人間界のものよりかなり毒性は強いけどね」
「そんな危険なモン未来ちゃんが持ってて大丈夫なのか?」
水芭蕉を疑うようにじろじろ見る桑原。
「発芽直後の葉間中央から、かぶれの原因である純白の仏炎庖を出していなければ大丈夫だ。未来には発芽前の水芭蕉を渡している」
「それを聞いて安心したぜ!」
蔵馬の解説を聞き、問題が解消したと桑原はどかっとソファーに座りなおした。
「……」
飛影は相変わらず窓の外を眺めていた。
蔵馬はまた未来を守るために最良の行動をしている。
陣だって、未来のために発言して左京たちに怒っていた。
陣に関することが原因で、未来とはぎこちなくなった。
なんで自分が、陣に負けたような気分にならなければならないのか。
…戦って負けたわけでもないのに。
チ、と飛影は舌打ちする。
桑原の口から出た、“幻滅”、という言葉がいやに飛影の耳にはりつく。
未来に嫌われようがどう思われようが、飛影はどうでもいいはずだった。
だが未来との諍いを気にしてしまっている自分がいることを、飛影は否定できない。
今だって、未来のために邪眼を使うという行動にでている。
未来に対するこの不可解な気持ちの正体を飛影は知りたかった。
知ったら、この気持ちが払拭されて、また以前の自分に戻れるような気がした。