long dreamA


□邪眼師飛影
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「あ、雨…」


レストランで案内された席に着き、窓の外を見て呟く未来。


大粒の雨が大地を濡らしはじめていた。


未来の席は窓側で、彼女の右隣には怨爺、その隣に裏浦島が座っている。


目の前には黒桃太郎で、彼の隣は魔金太郎、死々若丸という席順だ。


(裏御伽チームは和食が好きそう、っていうか似合うのになあ)


未来はチームの面々を見渡しながら思う。


あいにくホテル最上階のレストラン街に和食の店はなく、訪れたのはまさかのフランス料理店。


以前ルームサービスを頼んで蔵馬と料理を受け取りに来た店よりも、数段高級な店だった。


六人はフルコースを注文し、今は前菜を食べている最中である。


「準決勝…いや、優勝の前祝いみてーなもんだな」


未来の目の前に座る黒桃太郎が料理をほおばりながら言う。


「人間界の食い物も、けっこうイケるな」


黒桃太郎の隣にいる、口いっぱいに食べ物を入れて満足気な顔の魔金太郎。


「怨爺さんはよかったんですか?フランス料理で」


未来が隣の怨爺に尋ねる。


裏御伽チームの五人のうち、未来はまだ怨爺にしか話しかけることができずにいた。


話しかけやすいのは怨爺と裏浦島くらいで、ほかのメンバーは恐かった。


「よかったもなにも、フランス料理はワシの大好物じゃ」


美しいしのう、と怨爺は付け加える。


「え、そうなんですか?お年寄りはこういう料理は苦手で、和食が好きな方が多いかと思ってました」


「そ、それは偏見じゃ。まあ、ワシは和食も好きだがの。日本料理は美しい」


平然と言った怨爺だが、未来は少しばかり彼がしまった、という顔をした気がしてならなかった。


(私の考えすぎかな?でも怨爺さん、何か隠しているような…)


不可解に思う未来。


「メインディッシュが楽しみだな」


前菜を食べ終え、早くも気持ちがメインディッシュに向いている裏浦島である。


「本当のメインディッシュは、明日オレ達が倒す五人だろ」


フ、と黒桃太郎が、未来を小バカにしたように笑った。


(随分自信があるみたいだけど、浦飯チームが負けるわけないよ)


未来は幽助たち五人の強さには絶対の信頼をおいている。


だが、黒桃太郎本人には言い返すことはできない。


変に彼の気に触って、殺されても困るからだ。


黒桃太郎にかかれば、未来など一瞬でお陀仏だろう。


「とても思えんな」


突然、黒桃太郎に笑われても黙っている未来を見て呟いた死々若丸。


「たいしたことのない、ただの普通の人間の女だ。気弾を当てた相手をパワーアップさせたり、結界を破る能力があるとは思えんな」


死々若丸は未来をバカにした視線をおくり笑った後、彼女から目線を外す。


「な…」


なんでいきなりそんなこと言われなきゃならないの、と言い返そうとした未来だが、口を閉じる。


裏御伽チームの五人には口答えしない、と未来は決めていた。


しかし、さすがに情けなくなってきた。


周りに幽助たちがいないと、敵に言い返すことも出来ない。


そんな自分に、未来は嫌気がさしていた。


口答えしないことは、力のない未来にとって賢い選択なのかもしれない。


幽助たちはただ未来の無事だけを祈っていて、スパイとして行動してほしいなど微塵も思っていないだろうが…


自分の仲間は強い、勝つのだと、黒桃太郎に言わなかったことを未来は後悔した。


「そういう能力があっても、お前自身には強い妖力に対する抵抗力はないだろ?明日オレが試合に出る時は、闘技場から離れることだな」


「? 明日何をするつもりなの…?」


意図が分からない死々若丸の忠告に、首をかしげる未来。


「ほっほっほ。とにかく闘技場から出ることじゃ。死々若の雄姿が見れんのは残念だろうがのう」


怨爺が不敵に笑った。


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