long dreamA
□PIERROTの贈り物
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―“好きなもの”の“好きなもの”を殺すとき…一体どれほどの快感に襲われるのかを考えると、私はとても興奮するよ…―
鴉の言葉が蔵馬の中でエコーのようにこだまする。
その言葉が何を意味するか分かっているのは蔵馬だけだった。
未来はといえば変態ちっくな一連の鴉の発言が到底理解できなかったため、その言葉の意味を特に深く考えずにいる。
「未来さんに蔵馬選手!」
突如女性の声がし、二人がそちらを振り返れば…
「小兎さん!どうしたんですか?」
「実は蔵馬選手に頼みがあって…」
未来が尋ねると、駆け寄ってきた小兎がお願いするように手を合わせる。
・・・・
蔵馬と未来は闘技場内の医務室に来ていた。
なんでも手当てに使う薬が足りなくなったらしく、蔵馬の薬草が欲しいと小兎に頼まれたからだ。
鴉や武威…先ほど肌で感じた戸愚呂チームの強さから目をそらしたくなり、一時的に忘れたいという思いが二人にあったのかもしれない。
気分転換にもなると考えた蔵馬は小兎の頼みを二つ返事で承諾し、自然と医務室へ足を運んだ。
「未来はそこで待ってて」
蔵馬に言われ、ぽすっと待合室のソファーに腰をおろす未来。
受付で病院長らしき人物と話している蔵馬をぼんやりとした目で眺める。
(本当に勝てるのかな…)
否が応でも訪れる明後日のことを考えると、気落ちしてしまい項垂れる。
カッカッカッとヒールで廊下を歩く音が聞こえ未来が顔をあげると、見覚えのあるナース服を着た女性の姿が。
(あー!結界師瑠架!)
忘れるわけがない。
魔性使い戦の際、彼女のせいで飛影と覆面が戦えないという、危機的状況に浦飯チームは陥ったのだ。
瑠架も未来に気がつき立ち止まると、罰が悪そうに顔をかたむけた。
気まずい空気が二人の間を流れるが、先に沈黙を破ったのは瑠架だった。
「…貴女に会いたがっている人がこの部屋にいますわ。鈴木さんという方です。行ってあげてください」
そう言って瑠架は近くの病室を指さした。
「え、なんで?ていうか蔵馬が…」
行くにしても蔵馬に一声かけてから、と思った未来は受付にいる彼の後ろ姿を見る。
「彼には私から言っておきますから」
(ま、まあ鈴木なら危険なめにあうこともないだろうし、会ってみようか)
未来は瑠架の好意に甘え、病室に近づきその扉をノックした。
入れ、との声が中から聞こえ、部屋へと入室する。