long dreamB

□Missing
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「ただのケンカしようぜ。国なんかぬきでよ」


国家解散し、皆がただの一人に戻る。
くじで組み合わせを決めてトーナメント形式で試合を行う。
最後まで勝ち残った者が大将!


幽助が黄泉に提案したのは、なんともシンプルで分かりやすい、魔界統一トーナメントの開催だった。


「あいつらしいな。実にバカだ」


移動要塞・百足の背に立ち、一部始終を軀が仕掛けた盗聴虫と邪眼で見ていた飛影が笑う。


「飛影。皆に伝えてくれ。今日から軀はただの妖怪だとな」


「お前、気に入ったぜ」


迷いなく幽助の提案にのった軀を横目で見やり、口角を上げる飛影。彼だってもちろん幽助に賛同だ。


「のった」


「あー!オメーら何でェ!?」


ふすまを開けて現れた蔵馬、陣、凍矢、酎、鈴駒、鈴木、死々若丸といった懐かしい面々の登場に、幽助は顔を輝かせる。


「黄泉…悪いが今からオレはただの蔵馬だ。ただし幽助の案にお前が応じなければこの場でオレたちは幽助につく」


「蔵馬、貴様っ…」


時を同じくして軀の本隊接近中の情報が入り、黄泉は幽助の案をのまざるをえなくなる。
蔵馬に反旗を翻された今、黄泉に他の選択肢は残されていなかったのだ。


「よォ!元気かよ!」


「幽助ー!」


陣や酎と肩を組み再会を喜び合っている幽助の姿に、また小さく笑った飛影だったが。


「相変わらず突拍子もねーこと考える奴だっちゃ!早く帰って未来に教えてやるだ!きっと心配してるはずだべ」


ドクンと胸が大きく跳ねる。


出るはずのない名前を述べた、陣の台詞に耳を疑った。


「未来!?未来って言ったか今!?どういうことだ!?」


「ちょうど三カ月前に未来が戻ってきたんだべ。今は幻海師範の家で一緒に暮らしてるだ」


「えー!マジか!よっしゃ!未来、またこっち来れたんだな!」


仲間の帰還を知り、興奮気味の幽助が破顔する。


「幽助、今からオレたちと一緒に一度人間界に帰るか?未来に会いに」


「んー……いいや。親父のことで、まだオレこっちにいなきゃなんねーし」


雷禅が死んで間もない国を留守にできないのは嘘じゃない。
しかし、蔵馬の誘いを断った本当の理由は他にあった。


人間界に帰って一番に会う人物は、螢子であるべきだと幽助は考えたのだ。


「そうか。まあきっとトーナメントの日に会えるよ。未来も絶対に観に行くってきかないと思うから」


「またな、幽助!トーナメントでオメーと当たるの楽しみにしてるべ!」


「おう。未来とばーさんによろしくな!」


蔵馬たち七人は、幽助に別れを告げ幻海邸へ帰っていった。


「あーあ、行っちまったな。よかったのか?頼めばお前も人間界へ連れていってもらえたかもしれないぜ」


呆然としていた飛影は、横から投げられた声に振り向く。


「知っていたのか?」


たしか軀は、偵察のために人間界や霊界にも使い魔を送っていたはずだ。


「知っていたも何も、オレは親切に未来を要塞へ招待までしてやったじゃないか」


「何だと?」


「たった一か月前のことをもう忘れたのか」


“喜べよ、オレがお前のために未来を連れてきてやったんだぜ”


まさか、あの台詞は嘘ではなかったというのだろうか。


「貴様、未来に何をした」


「安心しろよ、何もしてねェ。未来は無傷のまま帰したさ」


「何が目的だった」


「言ったろ、お前に会わせてやろうと考えたんだ」


しかし、軀に未来の来訪を信じさせる気があったとは、本当に会わせる気があったとは飛影は到底思えなかった。


そんな飛影の胸中を察したのか、軀が続ける。


「飛影、オレに怒りを向けるならお門違いだ。これはお前と未来の選択の結果だぜ。オレの言葉を嘘と決めつけたお前と、お前に会わず帰ることを選んだ未来のな」


お前に会わず帰ることを選んだ。
この部分で、ピクリと飛影の眉が動き、瞳が揺れたのを軀は見逃さなかった。


「ショックなのか?また未来に選ばれなかったと知って」


あっさり帰った未来にガッカリしたのは軀の方だった。


そして今は、性懲りもなく動揺している目の前の飛影に怒りを感じている。


「心底お前が不憫だよ飛影。無様だな。またお前は未来にかき乱され振り回されている」


三カ月前、望み通りの死を迎えかけた飛影。
あれがまた繰り返されるかと思うと虫唾が走る。


「哀れな野郎だ」


バッサリと、軀は飛影へ言い放ったのだった。


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