long dreamB

□彼のやり方
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「ただいま!」


朗らかに告げると同時、視界に入ってきたのは額のJrの文字。


一番最初に未来を出迎えた、玄関扉を開けた人物はコエンマだった。


「コエンマ様、お久しぶりです!」


久しぶりの再会に目頭が熱くなる未来と、驚きであんぐり口を開けているコエンマ。


「未来!?本当に未来なのか!?」


未来の顔をまじまじと見つめると、やっと反応できたコエンマが叫ぶ。


「未来だって!?」


コエンマの声を聞きつけ、鈴駒を筆頭に居間にいた八名も玄関まで駆けつけた。


「わーい!未来だーーっ!」
「未来だべ!会いたかったっちゃ!」


「鈴駒、陣…!わっ」


コエンマを押しのけて、鈴駒が走ってきた勢いに任せ未来に飛びつき、二人まとめて陣が抱き締める。


「だっはっは!未来が帰ってくるとはな!」
「最高のクリスマスプレゼントだ…!」


団子になっている三人を見て、酎が豪快に笑い、鈴木は感極まっている。


「出遅れたな」


あっという間に未来が六人に囲まれ、蔵馬の肩にポンッと手を置くコエンマなのだった。


そんな様子を横目で見ていた凍矢が、蔵馬へ助け舟を出してやろうと口を開く。


「こらこら、その辺にして未来を解放してやれ」


はあいと返事をして、鈴駒と陣は未来から離れた。


「未来、どうしてここに…!?」


すかさず蔵馬が未来に駆け寄り、その手をとった。


「蔵馬、ただいま」


質問に答える前に、ふんわりと微笑んで蔵馬に告げた未来。


蔵馬も、まず最初に言うべきことがあったと気づいて。


「おかえり」


優しく笑って、仲間の帰還を喜び受け入れたのだった。


「実は死出の羽衣を被ったらね…」


未来はかくかくしかじかと、事のあらましを簡単にまとめて話す。


「え〜!?吏将と爆拳に会ったんか!?」
「オレの作った羽衣がそんなに役立っていたとは…!」


合間に漏らされた皆の反応は様々だった。


「なるほど、あんたがここに戻ってきたのは鈴木と死々若丸のおかげってわけかい」


「そうですね!鈴木、ありがとう。死々若にも今度会ったらお礼言っといてね」


「何言ってるんだ未来。死々若ならここに…」


鈴木が言い切る前に、未来は彼の肩に乗った手の平サイズの子鬼の存在に気づく。


「わー!可愛い!何この子、鈴木のペット?」


「なっ…誰がペットだこのバカ女!」


「うわ、喋った!鈴木、ちゃんと躾しとかなきゃ。こんな暴言吐くのよくないよ」


あまりの言われように、子鬼は怒りでわなわなと震えている。


「未来、悪かった。ペットの教育不足は飼い主であるオレの責任だ」


その台詞で堪忍袋の緒が切れた子鬼。


「誰が貴様のペットだ!?」


「いだだだ、死々若、めっ」


一瞬のうちに子鬼の姿は消え、代わりに死々若丸が鈴木を羽交い絞めにしていた。


「えー!?あの子鬼って死々若の変身だったの!?」


驚愕する未来の横で、周りの皆はクスクスと堪え切れない笑い声を漏らしている。


「ところで、皆こそどうして師範の家にいるの?」


「オレが呼んだんだ。黄泉軍の戦力としてね」


半年で妖力値10万以上を目指すべく、六人は幻海邸で特訓しているのだと蔵馬が説明した。


「そっか。私がいなかった半年間で、情勢はまだ変わってないんだね」


「ああ。だが近いうちに雷禅が死ぬ。その時に、魔界は大きく動くと思う」


黄泉、雷禅、軀。
今まで均衡のとれていた三者のバランスが崩れる日はすぐそこまで来ているのだ。


「コエンマ様、大変です!未来が帰ってきたらしいんです!」


その時、玄関扉がガラッと開けられ、明るいおてんば娘が登場した。


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