long dreamA
□逆玉手箱
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(飛影、痛そう…)
飛影の右肩の傷を心配気に見つめる未来。
「さあサイをふれ。またオレを出せよ」
飛影は死々若丸を命令口調で急かした。
ヒュ、と死々若丸の手から離れ、宙を舞うサイコロ。
(オレになれ)
(オレになれ)
(オレになんな!)
(飛影にはなりませんように!)
蔵馬、飛影、桑原、未来。
それぞれの思惑が交錯する中、導かれた目は…
「裏浦島と蔵馬だ!」
飛影に当たらなかったことにホッとし、蔵馬なら勝ってくれると安堵する未来。
「行ってくるよ」
蔵馬がリングに向かって歩く。
「蔵馬、ファイト!」
未来の声援に片手をあげ応える蔵馬。
一方、裏御伽チーム側では。
「サイコロの偶然とは不思議なものだな」
「全てこちらの都合のいいように目が出よる」
死々若丸に頷く怨爺。
「前の二人はいわば捨て石。思惑通り飛影に深手を負わせた。そして裏浦島。奴は蔵馬を倒すには最もうってつけだ」
リングに上がる裏浦島を見送り、死々若丸がフフ、と不敵に笑った。
「始め!」
樹里の合図で、裏浦島は竿を、蔵馬は薔薇の鞭をそれぞれしならせる。
「二人共、似たような武器を使うんだね」
ごくりと喉を鳴らし、固唾を飲んで試合を見守る未来。
竿と鞭、二つの武器が風をきる音が辺りに響く。
(…? 妙だ…本気を出していないように見える)
不可解な裏浦島に蔵馬は眉をひそめる。
「そのまま攻撃をしながら聞いてくれ」
そんな蔵馬に、なにやら神妙な顔をした裏浦島が小声で話しかけた。
「あんたに頼みがある。オレを…殺してくれ」
「!?」
予想外の申し出に蔵馬の目が大きく開いた。
「攻撃を続けて!」
だが裏浦島に言われ、鞭を鳴らし続ける手は止めない。
「オレ達はお伽話の物語の中で倒された悪役や不幸な結末を迎えた登場人物の邪念によって生まれた存在だ。オレも疑問と不満が邪念となり、そして生まれ戻った。開けちゃいけない玉手箱をなぜよこした、亀を助けた報酬がこの仕打ちかとな」
「…ねえ、なんかこそこそ話しているように見えない?蔵馬も攻めていかないし…」
何を言っているかは聞きとれないがずっと口を動かしている裏浦島と、攻めの攻撃姿勢をとらない蔵馬を未来は不思議に思った。
「蔵馬、どっか調子でも悪いのか?」
桑原も未来同様、本気をださない蔵馬が腑に落ちない。
「たしかに逆襲を考えたこともあった。だが今はもう死々若丸達の考え方にはついていけない。オレ達の物語を読んで人間達がいろいろなことを学びとる。それでオレ達の役目は終わっているんだ」
そう悟った裏浦島の姿には、見る者の胸を締めつけさせるものがあった。