long dreamA
□種明かし
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「ナルという女性の人格が仙水にはあると言ったな。彼女はオレとよく似た未来がこの世界に来ることを知り発狂した」
「貴様と未来が似てるだと?ふざけたことをぬけぬけと」
「そうだぜ!失礼にもほどがあんだろうが!未来ちゃんはテメーみたいな変態じゃないぜ!」
飛影・桑原コンビに罵倒されるも、樹は顔色を変えない。
「オレは闇撫、次元を操る妖怪だ。結界に阻まれることなく次元を自由に行き来できる未来と似ているだろう」
樹の言うことも些か的を得ており、飛影と桑原は言葉に詰まる。
「オレと似た女性の存在がナルは許せなかった。未来に嫉妬したナルは、彼女にオレがとられるんじゃないかなんて無用な心配もしてたみたいだ。可愛いところがあるだろう?」
「ああそうだな、まっったく要らねー心配だぜ」
厭味ったらしくイライラした口調で桑原が同意する。
「取り乱すナルは自分の魂の一部を未来に寄生させたいと言い出し、オレたちは未来がこの世界へ来た直後にそれを実行した。未来はトリップの衝撃で意識がなかったから気づかなかっただろうけどな」
トラックに轢かれると思って咄嗟に瞼を閉じて…目を開けると、気づけば未来はこの世界にトリップしていた。
トリップした未来が意識を失っている間に、樹は仙水の魂の一部を彼女に植え付けたというのか。
「そんな…魂をバラバラにできるまで…それほどまで、忍の心は脆くなっていたのか…」
悲痛に顔を歪ませたコエンマが、ガクリと地面に膝と手をつき打ちひしがれる。
「コエンマ様…魂を分裂させるなんてことできるんですか?」
幽助に聖光気をおくり終えた未来が、大きな衝撃とショックを受けながらも、震える足を奮い立たせ、コエンマの元へ歩み寄る。
「普通の精神状態の人間には到底できない。ひどく傷つき、崩壊寸前の魂でないと不可能だ。加えて、身を引き裂かれる以上の苦痛を味わう行為だ…」
「仙水はもう痛みに麻痺していた。魂を切り取るくらいわけなかったさ。人間に幻滅し絶望した仙水の心はすでにボロボロだった」
多重人格は精神疾患だ。仙水はきっと、心的ストレスから逃避するため多くの人格を作り出したのだろう。
「ナルは未来の中に自分が生きていることで、心の均衡を保ったんだ。未来は自分の一部だと考えれば嫉妬に苦しまずにすむ」
ナルが自分の魂を未来の魂に融合させたのも、嫉妬からの逃避行為である。
「ナルはうっとりした表情でよく言っていた。“未来…お前は似ている…私と樹に…”とな」
そのナルの表情を思い出しながら述べた樹の顔も、うっとり恍惚としていた。