long dreamA


□前兆
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「本当に病院に連れてきたんだ…」


ぽつりと病院の待合室に佇み呟く未来。


タクシーに乗り込んだ未来は前を走るバイクを追ってくれと運転手に頼み、この大凶病院へたどり着いた。


(安心したけど、なんか拍子抜け)


どうやら刃霧は善意で御手洗を助けたようだ。

病院へ送っていったのだから、そうとしか思えない。


病院名こそ怪しいが、しっかり医療設備が整った大病院である。


「追ってくるとは、お前も暇だな」


「うわっ!」


気づけば今一番会いたくない相手No.1である刃霧が隣に立っていて、たじろぐ未来。


刃霧がきちんと御手洗を病院に連れてきた今となっては、タクシーで追いかけたなんてばかばかしい。


疑ってしまい刃霧に対する後ろめたさもあったし、自分の愚行が恥ずかしくて未来はできれば彼と会うのを避けたかった。


「あいつなら診察を受けてる最中だぜ」


「そっか、よかった。ありがとね、私が言うのも変だけど…」


おずおずと低姿勢で未来は述べる。


きっと刃霧は自分と同じ症状の御手洗を遠くから見て心配し、様子を伺って尾行していたのだろうと未来は自己解釈した。


これならタイミングのよい刃霧の登場も説明できる。


ただひとつ謎なのは、


「ねえ、なんで私の名前を知ってたの?」


これだけだ。


「…ある人に聞いた」


「誰?」


「いずれ分かる」


「もう〜、そればっか!」


納得のいく答えをくれない刃霧に、未来は口を尖らせる。


(ほんとに誰だろう…)


全く思い当たる節がないが、刃霧の言う通り“いずれ分かる”なら深く考えないことにした。


「じゃあさ、いずれ分かるってのはなんで?どういう意味?」


ここさえ判明すれば、何か謎が解けるかもしれない。


最後の質問だとことわって、未来は刃霧に訊ねる。


「オレたちは近いうちにまた出会って、否が応でも顔を合わせることになるから」


「え?」


刃霧の返答にどう反応していいかわからない未来。


「ま、まあいいや。じゃあ私もう行くね」


当初の目的である買い物をするため、未来は踵を返すと病院を出て行った。


(新手のナンパ?また会う運命的な…)


病院の自動ドアをくぐりながら、首を捻る未来だった。


(でもナンパならこんなにすんなり私を帰さないだろうし…あ、でもまた会う運命だから問題ないのか)


まあ御手洗は無事見届けたし、一件落着だ。


これ以上考えて悩むのはやめようと思い直し、気持ちを切り替えて未来は足を踏み出していった。




“能力名は狙撃手(スナイパー)”

実は刃霧のこの一言こそ重要な意味を持っていたのだが、すっかり聞き落としていた未来は知るよしもなかった。






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