long dreamA


□莫逆盟友
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「なかなか便利な道具だな。これは幻海の形見か?」


ヒュルヒュルと腕を伸ばし、床に転がった桑原の試しの剣を取った戸愚呂兄。


「しかし遣った相手がこのマヌケじゃ、死んだあいつもうかばれないな…」


「なに?い、今なんて言った!?」


戸愚呂兄から出た言葉に反応し、痛みに耐えながら桑原は立ち上がる。


「何を驚いている?まさかお前知らなかったのか。幻海は死んだ。殺されたのさ」


敵である戸愚呂兄から改めて突きつけられた現実に、悔しさから幽助は唇を噛んだ。


(そんな…オレだけ…オレだけ知らなかったのかよ…!)


桑原は責めるような視線を仲間たちへおくる。


そんな桑原の様子に、ヒャハハハハハと戸愚呂兄は下品に笑った。


「お前の仲間も冷てェな!誰も教えてくれなかったのか!」


そのニタニタ笑いを保ったまま、彼は浦飯チームへと目線を移す。


「お前らどうせ、何も知らねーコイツを見て心ん中で嘲笑ってたんだろ!」


「違っ…そんなわけない!」


未来が即座に否定するが、戸愚呂兄はその反応さえも楽しんでいるようだった。


「よしオレが桑原に教えてやろう。人形劇でな」


戸愚呂兄が右腕を変形させ、若い頃の幻海そっくりの人形を作った。


「昔々若い男と女がいました。二人は共に武道を極めんとする仲間でした。しかし年月が過ぎ女は年をとり…」


人形に皺がきざまれ、年をとった幻海の姿になる。


「逆に男は武道のために魔の力を借り若さを保ち続けたのです」


戸愚呂弟のとがめる声が入るが、兄はやめようとしない。


「年をとった女は若いままの男を恨み決闘を申し込みましたが、あわれにも返り討ちにあってしまいます」


ザシュッと戸愚呂兄が左腕で人形の幻海の体を突き刺した。


それと死んだ時の幻海が重なった未来。


血を流す人形を見ていると、もう一度幻海が殺されたような気分になった。


悲しみや悔しさ、怒りでわなわなと震える。


「こうして幻海は弟に殺されて天国へ行きましたとさ」


闘技場に戸愚呂兄の高笑いが響きわたり、それがまた桑原の怒りを増幅させた。


「切れたぜ。カンペキによ…」


桑原の瞳は何も映していないかのように暗く、戸愚呂への怒りに燃えている。


「ふん…威勢がいいな。だがお前の切り札はここだぞ?」


試しの剣を奪っていた戸愚呂兄は、またあの鋭い指先を伸ばし桑原を攻撃する。


だが、大きな誤算が生じた。


「皮膚で止まっている…?ばかなこれ以上刺さらん」


どうやっても桑原の体を突き刺すことができないのだ。


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