long dreamA


□悲しい結末
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幽助は幻海の体を抱え、その上半身を起こす。


「ばあさん!ばあさんしっかりしろ!」


「師範!しっかり!お願い…」


絞りとられそうな声で祈る未来。


「幽助と未来…か」


二人の必死の呼びかけが届いたのか、幻海が目を開いた。


「ばあさん!よっしゃ今すぐ皆のとこ連れてくからな!」


「蔵馬が治してくれるよ!さっきも医務室で薬草を提供しててね…」


「私は死ぬさ…あの時からわかっていた…」


喜ぶ幽助と未来とは対照的に、幻海の表情はもう死を悟っていた。


淡々と幻海は三鬼衆が暗黒武術会へ招待に来た時のことを語る。


幻海にとって50年ぶりの武術会だった。


「戸愚呂がばあさんと共に戦った仲間…?」


「50年も前に…?」


告げられた衝撃的な事実。


「オレは人間から妖怪に転生したんだよ。より長く自分の強さを維持するためにね」


ニヤリと笑みを浮かべる戸愚呂が説明する。


「それが50年前の暗黒武術会で優勝した時の望みだった。仲間はみんな猛反対したがね…」


幽助は戸愚呂をキッと睨みつけると、幻海の右手を強く優しく握った。未来は左手を。


「幽助…未来…人はみな…時間と闘わなきゃならない…奴は…その闘いから逃げたのさ…」


幽助と未来の二人に絶対に伝えておきたいことがあった。


息を切らしつつも、幻海は途絶えそうな命のすべてをそこに注ぐように必死で述べる。


「お前は間違えるな…幽助…お前はひとりじゃない…忘れるな…誰のために…強く…」


幻海は懸命に語りかける。


50年前の戸愚呂と同じように、危うい強さを持った幽助に。


「ばあさん…」
「師範…」


幻海の瞳には自分を見つめる幽助と未来が映る。


彼女は二人の顔を眺めると、口元をゆるめ笑った。


「出来の悪い弟子と…家事もろくにできない不器用な子供が…同時期にやって来て…うるさい孫が…ふたりいっぺんにできたみたいだった…」


穏やかな笑顔のあと、ふっと消えた命の灯火。


幽助の腕の中で息絶えた幻海の姿に、未来の目の前は真っ暗になった。


(私だって…私だって…師範が…)


嗚咽をこらえるが、止まらない涙は静かに流れ未来の頬をつたう。


(本当のおばあちゃんみたいで嬉しかった…)


この世界にきて以来、ずっと幻海と寝食を共にしてきた未来。


最初こそ幻海の毒舌にへこたれる日もあったが、いつの間にか彼女を本当の祖母のように慕っている未来がいた。


幽助にとっても、幻海はかけがえのない師匠となっていた。


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