main(短編)
□夢
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「こんにちはー。」
放課後、ひよりは雪音の勉強を見るべくいつものように小福宅を訪ねる。
「あ、ひよりーんっ!!」
ひよりの存在に逸早く気付いた小福がひよりに勢いよくギュッと抱きつく。
その反動で後ろに倒れそうになるが、なんとか堪えて、「こんにちは、小福さん」と挨拶する。
「ひよりちゃん、今日も雪音に勉強教えに来たのか?」
その後ろからエプロン姿の大黒が来て尋ねる。
「あ、こんにちは。そうなんですけど…もしかして雪音くんバイト中ですか?」
「いや、今は二階で休憩してる。でも今はちょっと勉強出来ねぇかもな…」
「え…?」
意味深な言葉の続きに首を傾げると「まぁ、とにかくあがんな。」とひよりを家の中へと招き入れた。
「温かいお茶でいいか。」
「あ、はい。ありがとうございます。」
コトリと目の前に出されたお茶にお礼を言い、向こう側に座る大黒を見る。
「あの…で、今は勉強出来ないってどういう事ですか?」
ひよりの問いを聞きながらポケットから出した煙草を一つ口に加え答える。
「実はな…アイツ最近眠れてないらしいんだ。」
「眠れて…いない?」
大黒の言葉を聞き返すひより。
そんなひよりに大黒の隣に座って聞いていた小福が代わりに答える。
「そうなの。ゆっきーね、最近全然眠れなくてすごく寝不足なんだって。それで今日なんか仕事してる途中いきなり倒れちゃって…」
「え!?そ、それで雪音くんは大丈夫だったんですか!?」
雪音が倒れたと聞き、慌てるひよりに「心配すんな」と大黒が言う。
「駆けつけて名前呼んだらすぐに気が付いて『大丈夫ですから』って立ち上がったよ。けど…」
そこで言葉を一旦切り、煙草を口から離し煙を出して続ける。
「…立ち上がった後もフラフラでな。さすがに休ませた方がいいと思って二階で寝かせてるってわけ。」
「でも私が様子見に行ったけど全然眠れてないみたいで〜…ゆっきー、上半身起こしてボーッとしてた。」
煎餅を頬張りながらその光景を思い出すように小福はそう話した。
そう言われてみると少しひよりにも心当たりがあった。
最近、勉強を教えているときもまるで心ここにあらずと言った感じの時もあるし、目もとをやたらと擦っていた気がする。
疲れてるんじゃないかとひよりも思い、「今日は勉強休む?」と聞いた時もあった。