壊してしまおうか
□ルービックキューブ
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[あ、なんかズレてる]
昼下がり。
晴天だった。
晴れ渡る空の下、少年が精一杯、両腕を伸ばし、空に流れる雲をつかもうとした。
勿論、つかめるはずもなく、ただそこに無気力に腕を伸ばし続けるだけ。
無駄だった。
次の日の朝、少年は日が昇るのと同時に飛び起き、洗面所に駆け込み、蛇口を捻り、水を出し、その水をつかもうとした。
自分の掌に収めたかったのだろう。
だが空しくも、そんな少年の夢を壊すかのように、水は手をすり抜け、逃げていく。
少年はとても惨めに泣きそうなほど顔を顰め、それでも尚、瞳には好奇心の光を灯わせながら、一言つぶやいた。
「あ、なんかズレてる」