うたプリ♪main

□*君に。
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―君にね、ずっと伝えたかったんだ―




俺は今真っ白いベッドの上にいる。
ふと横を見ればやたらと豪華な花束が綺麗な花瓶にいれられて飾られている。


…あいつ、まだ来ないのかなぁ…
自慢のつやのあるオレンジの髪の毛をいじりながら愛おしげにドアの方を見る。


欠けていく記憶の中、あいつだけは消えずにちゃんと残っている。他の物なんてとっくに消えていったのに。

そんな幸せな日はいつまで続くのだろうか…。
ふと頭をそんな考えがよぎる。
きっと今の俺の顔はレディ達には到底見せられないような顔をしているんだろうな。


その時、ちょうどドアが開きあいつ―聖川が入ってきた。
『おい神宮寺!ちゃんと寝てろ!そして、俺が誰だか分かるか!?』
これが俺らの日課。
聖川は心配性だから毎回こんな会話をしているんだと思う。
「聖川、毎日毎日同じことを言わせるなよ。そんなに俺のことが気になるのか?」
『気になるなどではない!ただ心配してやっているだけだ。』
どっちでも嬉しいけど、と思いながら聖川に微笑んだ。

それから俺らはたわいもない会話をした。
『じゃあ、また明日来るからな。ちゃんと看護婦さんの言うことを聞けよ?
……あと、看護婦さんをナンパするのはやめるんだぞ!?わかったな!……それじゃあ、またな。』
お前は親かよ、と思うぐらいに世話を焼いてくる。ああやって最後も名残惜しそうに帰っていく。
まぁ、そんなありのままの聖川だから好きなのだが。


このいつから始まったか分からないこの淡い恋心はあいつには伝えたくない。
……距離ができてしまうような気がして。
あいつと過ごせるのもあと少しだ。最後までこの心を隠し通せばいいだけなんだから。

そんなこれからの短い人生について考えながら、気づかないうちに寝てしまった。




―楽しかった日はもう続かないのに―




次の日、朝日が眩しくて起きたとき既に記憶から一番大切だった何かはなくなっていた。
自分ではもうそれが何だったのかも思い出せない。
ただわかるのは、今までにない倦怠感と脱力感が俺を襲っていることだけだった。
もともと、なんにも楽しみがない俺にとって欠けてしまったものの存在はとても大きかったんだ。


そして、ドアから青い髪が覗き少年が微笑んだ瞬間、優しい気持ちに包まれ、そして俺は意識を手放した…。
最後に頭に浮かんだものは紛れもないあの少年ただ一つだけだった……。




俺が唯一の言い残したこと。
それを記した手紙を今頃手にとってくれているだろうか。


「聖川へ

お前に伝えそびれたことがあるんだ。本当は直接言いたかった。


……ただ、関係が崩れてしまうのが怖くて伝えられなかった。

俺は、小さい頃からお前のことが好きだった。


付き合ってくれ、とかそんなことは望まない。
ただ、俺という存在がいたことを忘れないで欲しい。

今まで本当にありがとう。
たくさん、ありがとう。


本当に大好きでした。

                                   Ren. 」


その手紙を読んで泣いて揺れているその青い髪を俺はきっと優しく撫でてやるんだ。


6/11.

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