☆捧げ物&頂き物☆
□ホップステップジャンプ
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「あーとーべーさん!跡部さん!」
氷帝学園に響き渡るとある他校の少女の声に跡部景吾はうんざりしていた。
「うわ、またお前か」
「うわっていいましたね・・。
また私です!
今日こそは会わせてもらいますからねっ!」
「っち」
ふざけんなよテメェ と口には出さなかった跡部だがその言葉を舌打ちに込めてその少女に発射した。
これはここ最近の氷帝学園男子テニス部の日常になっている。
時は2週間前にさかのぼることになるが・・・。
「なんども来んなうぜぇんだよ 」
「いや別に跡部さんには興味ありませんから。
ぜんっぜん興味ないですね。
みじんもないですね。
タイプじゃないですね。
むしろ嫌いなタイプですね。
ということで早くがっくん下さい。」
「もういい帰れ、邪魔だ。めざわりだ」
跡部はそういうと腕を組み「通らせねぇよ」とでもいうように蒼乃に立ちはだかるが、それを微動だにしない蒼乃は跡部を無視して自分の小柄な身体で跡部を避け、ちょこちょこと氷帝学園の学校門の中に入る。
そして、意味不明な勝手な解釈で跡部を黙らせる。
「入っていいって事ですね、了解です。」
「まてまてまてまてまて」
「いやもうホントなんなんですか。」
「いやお前がなんなんだアーン?」
「だから向日岳人くんに会わせて下さい!
出待ちしようともアンタらのファンで押しつぶされちゃっていつも会えないんですよ。
登下校も通学路違うし。」
「お前、向日のなんなんだよ。」
2週間前。
蒼乃という少女はいきなり氷帝学園の男子テニス部に訪ねてきた。
氷帝学園の男子テニス部は中学テニス界の強豪校であり、容姿端麗なレギュラー陣が山ほどいる。
だからファンも多いわけで特に跡部の場合は他のレギュラー部員達よりも格段に熱烈なファンの数が多い。
ファン達は毎日毎日跡部達の姿を見に、テニスコートのフェンスの外から見学をしているギャラリーがいるため蒼乃もその1人だと認識されていた。
・・が、
『岳人いますか?』
『岳人のジャージ1万円から売って下さい。』
『がっくん今どこにいます?』
『岳人に会わせて下さい!』
『がっくん今補修中?
私も一緒に補修受けます!』
『今日、がっくんが食堂のおかず残したらしいですね、食べカス下さい』
『岳人とモーレツに熱烈に会いたい今すぐ会いたい!だからコートに入れ下さい!』
『今は授業中?
関係ないです、私も授業受けます!』
このようなことを毎日毎日言い続けてくるものだから、跡部も部員も困ったもの。
さすがにここまでくるとファンどころの話ではないと悟った跡部は彼女をブラックリストにいれ、氷帝学園内にはいれないようにしたのだ。
もはや変態のレベルである。
彼女が岳人とどんな関係であろうが、岳人本人に会わせれば岳人にどんな支障がでるかわかったものではない。
跡部は全て把握していた。
蒼乃も負けじと岳人に会いに行こうと頑張るが跡部に押し負ける。
今日こそは、と決意して学園内に侵入できたのが今現在の出来事である。
向日のなんなんだよ、と聞かれてからは彼女の目は爛々になり、生き生きし始めた。
それほど向日と関係のある人物なんだろう。一方そんな彼女はみて、「踏んではいけない地雷を踏んじまった」と跡部は顔を引きつらす。
「私は、岳人の幼なじみです!!!!」
「よし、わかった帰れ。」
「幼なじみですよ?!
がっくんの幼なじみですよ!?
お さ な な じ み !!」
「あーわかった岳人に伝えておく変態が来たってな。」
「なんとでも言うが良い。
私が来たとなればきっと飛んでくるだろうよ、岳人は。」
「・・わかった。」
「わっ!通してくれるの!?」
「この俺様がお前に膝まづいて手の甲にキスをくれてやる、これでどうだ。」
「ぶっ殺すぞ」