☆捧げ物&頂き物☆

□咲き誇れ、銀の桜
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4月12日。
小学校、中学校、高校、入学式がすでに終わっているこの時期は在校生達のクラス替えなどもあり少し緊張感のある期間だ。
といっても、今年の4月12日は土曜日。
金曜日の次の日というのもあり、人々は気分が晴れやかになっている。
街中で友人や恋人が出かけて歩いていたり、犬の散歩をする人もいたり、賑やかだった。
そんな中、特に気分がよさそうに歌を歌いながら住宅街をかけぬける少女がいる。

「今日はたんじょーび
誰のたんじょーび
私のたんじょーびっ」

「なんや、随分と機嫌えぇな。」

「はん?」

声のしたほうへと振り替える彼女。
そこにいたのは、白石蔵ノ助。
いつもの部活や学校にいるときの服装とは違い私服である。
まだ春と言っても冷たい風は吹いているため、まだまだ薄着とは言いがたい服装だがピンク色の可愛らしい服を着ている。

「ピンク似合いますね。」

「せーやーろー?やって俺やし」

「・・ですね」

白石が一つ下の後輩である彼女に声をかけたのは、二人が恋人−−−−ではなく、ただたんに待ち合わせをしていたから。

「よっしゃ、行こか。」

「はい。」

今日は、この彼女・・銀桜の誕生日である。
今日は彼女の誕生日のために白石をはじめとした四天宝寺男子テニス部の部員とともに誕生日会をするという計画をたてていた。

サプライズではないものの、少しでも楽しんでほしいという白石の思いつきで他の部員は誕生日会の飾り付け担当で白石は誕生日の主役を迎えにいくという担当であった。
なぜ白石が迎えに行く担当であったかは「あみだくじ」の結果である。

「どんな風になってます?部室」

「ん〜・・とりあえず大阪っぽい感じやな。」

「ちょっとよくわかんないんですけど・・こけし飾るのとかはやめて下さいね」

「いや、そんなこと誰がす・・あ、オサムちゃんならやりかねんな。」

「あ、図々しいこと聞きますがプレゼントってなんでしょう?」

「そんなこと教えとったら楽しみなくなるやろ。」

「あーそうですね・・」

誕生日会が楽しみでならないのかそうゆう質問ばかりしながら道を進むが白石は困ったように返答していた。
なぜ、彼女と四天テニス部が接点があるのかというと彼女が財前光と同い年、というのもあるが彼女の近所には、「遠山金太郎」が住んでいてお互いが小さいころから今の今まで仲がよく、金太郎を通して四天テニス部と仲良くなった。

銀桜と金太郎は小学生のころまでは「姉と弟」的な関係にあったが中学生になってからは「先輩と後輩」の関係といつのまにか変化していた。しかし関係が変わったとしても2人の仲が途切れることはなく今も仲良く登下校をしたり遊んだりとしている。

「金ちゃん何の担当してます?」

「なんやったっけなぁ。
とりあえず料理担当からは避けたんやけど。」

「料理担当は小春先輩と財前が担当ですよね?
その二人しか料理つくれんような感じですし。」

「ドンピシャや、財前は善哉だけやけど」

「へー」

素っ気ない会話を続けながら2人は誕生日会場である、「部室」のドアの前へとやってきたのだが。

「ああああああああああああ!!」

「おい床汚れてるやん!
なにやっとんのや!」

「ちょっとー食材きれたんやけど誰か買うてきてー!」

「スマン、ワイ食べてもーた」

「小春が一緒に買いにいってくれるんならええよ!」

「おいイチャつくなお前ら!!」

「サーセーン。
鍋三杯ぶんの善哉できちゃいました」

「くえるかぁああああ!」

「「・・・・・・」」

ドア越しでもわかる。部室の中は大惨事となっているということを。

「は、入ります?」

「これ以上続けさせたら部室壊れるかもしれん。
俺だけ覗いてくるわ・・」

そう言って、白石はそっと部室のドアを開ける。
部室の中は言葉では表せないほど大惨事な状態になっていた。
白石がきたことで四天宝持テニス部員が突然「ビクゥ」と反応し、冷たいく空気と化す。

「自分ら・・何やっとんの?」

「金太郎が食材食ってもうてな!」

「財前が善哉作りすぎたんやてー」

「小石川がまだ来てへんのや。」

「いや、俺おるし!」

「わしは飾り付けがうまくできんくてのう」

「サーセン、バカップル買い出しにいかせてもええですか、キモいんで。」

口ぐちに部員が準備が終わっていない理由を部室の外まで聞こえるような大声で話しだすが何がなんだかで白石も少し困惑している。銀桜は部室の外で何が起こっているのかを察してジッとその場で待機をしていた。

「まてまてまてまて!
銀桜もう来てるんやで!?」

「はぁ?!白石早すぎとちゃう?」

「謙也さん感覚おかしいんじゃないですかー」

「まぁ・・どないしたらええかなー」

「いっそんこと違うところで祝って方がええんやない?」

めちゃくちゃな大惨事になっている部室では誕生日会などできなどしない。だったら店や誰かの家で祝った方がいいんじゃないかという提案を四天宝寺テニス部顧問であるオサムは言うが、それにのる気にならない部員が「うーん」と低い声でうなる。

それも気にせず、金太郎は銀桜が外にいるときいて部室のドアを乱暴にあけ飛び出した。

「銀桜―誕生日おめでとー!」

「うわっ」

「あ、コラ金太郎!」と白石はとめに入るが遅く、すでに金太郎は銀桜に飛びついていた。

「銀桜何歳になったん?」

「じゅうよn..」

「10歳!?え、ワイより年下!?」」

「いや10歳じゃなくて14歳ね、金ちゃん。」

「あ、そやったー」エヘヘと天真爛漫に笑う金太郎には何をされても許してしまいそうなくらい愛おしく、癒される。
その笑顔を小さい頃からずっとみてきた銀桜からも笑みがこぼれる。
が、白石からはそんなのはこぼれず、銀桜の上にのっかっていた金太郎の首根っこを掴んで銀桜から引きはがす。
まるで金太郎が主人のいう事を聞かない犬のようだ。と銀桜は思ってしまい一瞬クスと笑ってしまった。

「すまんな、銀桜。
部室使いもんにならんから違うところでやることになるんやけどええ?」

「別にかまいませんよ!」

「え!?部室でやらんの!?」

「しゃーないやろ、部室めちゃめちゃなんやから」

「でも、みんなで部室でワイやりたいー!」

「せやかても片づける時間が・・」

「あ、いや時間かかっても大丈夫ですよ。私、家では昨日パーティーやってきたので。私も手伝うので部室でやりましょう。」

「でも今日の主役がわざわざ自分の誕生日会の準備するっていうのも変な話やろ?」

「じゃ、銀桜と金太郎をでかけさせてそのうちに俺らが片づけて誕生会の準備すればええんやないですか?」

財前の発案にこの場にいた誰もが「それだ!」と思った。
金太郎は片づける際に邪魔になるだけだと財前思ったので適当に提案をあげただけなのだが。

「え!銀桜と遊びに行ってもええん?!」

「ええよ。
銀桜、準備できたら電話かけてもええ?」

「はい!」

「たこ焼き食いにいこーや、銀桜―!」

金太郎は銀桜の手をひいて学校の門をでる。それとともに、他の部員は片づけと準備を急いだ。

  
 
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