☆捧げ物&頂き物☆
□貴方から貰った言葉
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「おいお前。」
「は、はい!」
「巨人がいねぇからってチンタラよそ見してんじゃねぇよ。
ナメてんのか?」
「す、すみません!」
「早死にしてぇのかこのクソガキ。
もっとケジメをつけろバカが。」
「・・でも休憩だと思って少し休んでいただけなのにそんな言い方は酷いです。」
なーんてことをハッキリと言えるはずもない。
新人調査兵団の私はただひたすらリヴァイ兵長に謝るしかなかった。
彼のことは少し苦手である。
決して嫌いではないのだ、"苦手"なのだ。
新人調査兵団の中でも私はトロく、覚えが悪い。
元々私は、憲兵団に所属するつもりで長い年月をかけて訓練や鍛練を乗り越えてきたのだが、上からの命令で憲兵団には入れず調査兵団行きとなったのだ。
エレン・イェーガーやミカサ・アッカーマンといった特別な能力やずば抜けた技術をもっているものがこの団に入るのが正解であって、何の能力も技術もない私が調査兵団になった所で足手まといになるだけなのだ。
「上の奴らは何をやってんだか」と兵長の説教を終えた私は今更な愚痴をこぼしていると、
「おい、大丈夫か?
リヴァイ兵長すっげー怒ってたけど」
「いつものことだから。」
愚痴をこぼしている私に話しかけてきたのはエレンだった。
私が調査兵団に入団してからよく話すようになった相手だ。
彼は私と違い、調査兵団に自ら入団したらしい。
「お前さぁ、よく死なないよな。
お前みたいな奴が一番最初に巨人に喰われて死にそうなのに。」
「自分でもそれ思う。
・・てか特に大事な用もないのに話しかけないでくんない?」
「兵長に叱られたからって不機嫌になるなよな。
せっかく話しかけてやったのに。
それに今日お前誕生日だろ。」
「あれ、私今日誕生日だったのか!?」
「自分の生まれた日くらい覚えとけよ。
ったく・・さっさとメシ食いに行こうぜ。」
「そうだね。」
いつからだろうな、自分の誕生日を意識しなくなったのは。
何年か前までは、指折り数えてまだかまだかと楽しみにしていたのに。
これも、家族を失った影響だからだろうか。
急に虚しくなって私は仲間と一言も会話することなく無言の夕食を過ごした。
が、仲間の何人かは私に対しておめでとうと声を掛けてくる者もいた。
・・嬉しかった。
夕食を食べ終えた後、私は愛馬の様子を見に行こうと外へ出た。
冬でもないのに風が冷たい。
愛馬は私だと気付くと尻尾を振る。
なんとも可愛げのある奴だ。
私は「長生きしろよ〜」と言いながら愛馬を撫でまわす。
馬にデレデレしている私に冷たい声が鋭く私に刺さってきた。
「お前、いつもこんな時間に馬と戯れているのか?」
「り、リヴァイ兵長お疲れ様です!」
「滑稽だな」
突然のリヴァイ兵長の登場に私は思わず「ゲッ・・」と声をあげそうになったが咄嗟に踏ん張った。
「お前に言いたいことがあってな。」
「え!
も、もしかしてまた・・説教ですか?」
言いたいことがある、と言われた瞬間私は変に身構えてしまった。
兵長は私の行動に一瞬眉を潜めた。
「しまった」と私はまた彼の機嫌を損ねさしてしまったかと不安がよぎる。
「説教・・。
俺はお前に言いたいことは山ほどあるがな。」
「そ、そうですか・・」
私は肩を落としたが、
「そんなに身構えるな。
今は説教を言いに来たんじゃねぇ。」
「え?」
「まぁ、お前にとっては説教に聞こえかねないかもしれないが・・。
お前はハッキリ言って俺に言わせれば、調査兵団の役立たず野郎だ。」
「うっわ・・今グッサリ・・グッサリ来た・・。」
「だが役立たず程良く伸びる。
毎日叱ってやってるのは、俺がお前に期待しているからだ。
そのことを忘れるな。」
「えっ私期待されてるんですか!?
兵長に?!」
「わかったならさっさと明日の璧外調査の支度をしろ。
また説教をくらいてぇのか?」
「わっ、わかりました!
・・あの、兵長!
私、認められるように頑張りますね!!
それでは失礼します!!」
私は早口でそう言い、兵長に向けて頭を深く下げる。
兵長は無言でその場から立ち去って行ったが、私は彼が視界からいなくなるまでずっと頭を下げ続けた。
その時の私の表情は、自分でも気持ち悪いと自負できる程ニヤけていたと思う。
彼から貰った「お前に期待している」という言葉が死ぬほど嬉しかったからだ。
・・彼から貰ったその言葉のおかげで、私が後に自分も周りも驚くほどの成長を成し遂げることができたという話はまだまだ先の話である。