☆捧げ物&頂き物☆

□氷帝のとある一日
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それは本当に急に思いついた質問で、以前から疑問に思っていた訳ではなかったのだ。

ただ、パッと口から出てしまっただけで。

「跡部って駄菓子食ったことあるん?」

ないに決まっている。
 
あの跡部のことだ。

きっとお菓子といえば一流のシェフが高級な材料を使って作ったものしか食べたことがないのだろう。

「…あーん?」

「…ないんやったらそう言ったらええやん」

「えー!跡部ありえないC!!
あ、そうだ!!
今ポッキーあるから食べる?」

「ジロー、ポッキーは駄菓子じゃねえ。
激ダサだな」

「跡部部長…ポッキーもらうんですね」

ジローの手からポッキーをもらいどこか満足げに食べている跡部は今だけなら中学生に見える。

俺が言えたことではないかもしれないが。

「じゃあさじゃあさ!
帰り皆で駄菓子屋寄ってこーぜ!」

「あのな岳人、俺にも用事っていうもんがあってやな…」

「まぁ、一度くらいは食べてみるのもいいかもしれないからな。
よし樺地。車の用意だ」

「ウス」

「跡部、人の話はちゃんと聞くもんやで」

「仕方ないですよ、忍足先輩。
俺も今日はそろばんがありますけどもう諦めます。
さて、親に連絡を…」

あかんわこいつら。そう思いながらも携帯を取り出し、日吉と同じように親に連絡をする俺はなんて優しいんだろう。

柄じゃないことを考えてしまうあたり、俺も相当やられているようだ。



「ここが駄菓子屋か。まるで犬小屋じゃねーか」

「跡部、思っても言ったらあかんこともあるんやで」

「おお!俺これ初めて見た!
くそくそっ、こんな時に限って財布部室に置いてきちまった…!
なぁ侑士 「買ったるからちょっと待ち」 さんきゅ!」

「忍足〜!
俺これ欲しい!買っ「ジローは財布持ってるやろ?」うっ…」

「ジロー先輩、俺何も買う予定ないんで買いましょうか?」

「おいこら長太郎。
そうやってジローを甘やかすと調子のるぞ」

「先輩達うるさいですよ」

とりあえず俺と日吉が一番まともだということは分かった。
しかし、跡部のために駄菓子屋に来たというのに肝心の本人は静かに商品を見つめているだけではないか。

正直もう少し騒ぐかと思っていたのだが。

「何や跡部、そんな真剣に見つめるほど駄菓子に魅力あるか?」

「………おい。
どういうことだ!!」

いやいやこっちがどういうことやねん。
いきなり大声を出すとは思っていなかった俺達の視線は自然と跡部に集まる。

「10円…だと…!?
ふざけてるんじゃねーのか!?」

「それが100円やったらどう思う?
それこそふざけてると思うで」

「なるほど、それもそうだな」

あっさり納得してしまった跡部は商品を一つ手に取り一言放つ。

「樺地!
この店の駄菓子、全種類一つずつ買うぞ!!」

「ウス」

ビシッという効果音がつきそうな勢いでこちらを振り向く跡部を氷帝の女子生徒はどう思うのだろうか。

かっこいい?

アホの子?

状況が状況なだけに、俺が女子であれば後者を選択する。

「よし!よく聞け!
この後は俺様の家で駄菓子パーティーだ!!はーはっはっはっはっ…」

どうやら俺はまだまだ家に帰れそうにない。
本日2回目の親への連絡は王様の高笑いが終わってからにしよう。

 

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