松 夢小説
□色松と恐怖体験
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そのあと、カラ松兄さんと一松兄さんは茶の間でおそ松兄さん達に今までのことを説明していた。
私はチョロ松兄さんに怪我の手当てをしてもらい、上の部屋で十四松兄さんに慰められながら一緒に過ごした。
その中で私も十四松兄さんに怖かったことを全部話した。
でも私は「カラ松兄さんと一松兄さんが化け物になりかけていた」「それはこの傷だ」ということは話していない。
というか、話せなかった。
だから私は怪我もアイツらにやられたということを十四松兄さんにはしたのだが、十四松兄さんにはすぐそれが嘘だと見抜いてしまった。
「十四松兄さん、この話信じてくれる?」
「信じたいけど僕、嘘はついてほしくない。」
「え?」
「その怪我、カラ松兄さんと一松兄さんでしょ?」
「なんでわかっ」
「3人が帰って来た時、カラ松兄さんと一松兄さんから変な臭いがした…。
今まで嗅いだ事のない臭い。
その臭いが、名前の怪我からするから。」
あぁ、そうだ。
十四松兄さんは、鼻がいいんだった。
そんなことすら忘れてたなんて…。
「だってそれを話したら十四松兄さん達カラ松兄さんと一松兄さんを責めたりとかしちゃうのかなって思ったら…。
私そんなの嫌だよ、」
「ビックリは、するかもしれないけど…。
僕たちはカラ松兄さんと一松兄さんを嫌いにはならないよ。
だから名前は安心しましん軍隊!」
一方、下の階では名前と十四松以外の5人の兄弟が茶の間で話し合っていた。
カラ松の話を冷や汗をかきながらも真剣に聞いていたチョロ松とトド松とは裏腹に、おそ松は上の空ボーっとしていた。
「僕、今日寝れないかも…」
「よく3人とも死なないで帰ってこれたね…」
「すまない、俺がもっとちゃんとしていれば…名前を怪我をさせないですんだかもしれないのに。」
「…俺も何もできなかった。」
「ま、でもいいんじゃねーの?
もうあそこに行かなければお前らが狙われることもないんだろ?
だったらもう心配いらねーって。」
「ちょっとさ…おそ松兄さん無神経すぎじゃない?」
チョロ松が眉をひそめて言うと、それにトド松ものっかってきた。
「そうだよ!
カラ松兄さんと一松兄さんが化物になりかけたっていうし名前も怪我してるしもうちょっと真剣に話聞いたら!?」
「は!?
俺はただ長男としてだな!」
「いいんだ。
兄貴の無神経さとかは今に始まったことじゃないしな。」
カラ松が無理に笑って答える。
それにトド松とチョロ松は口を閉じるが、ものすごく心配そうな顔で2人はカラ松と一松を見つめる。
「あいあーい。
じゃ、この話はもうお開きってことで。」
おそ松の声で、チョロ松とトド松は一瞬ムっとしてから茶の間から名前と十四松がいる上の部屋へとそれぞれ移動した。
一松も、しんどそうに立ち上がると玄関に向かった。
恐らく猫にでも会いに行くんだろう。
他の兄弟達が部屋からいなくなったことを確認したおそ松は立ちあがり、口を開く。
「カラ松、お前隠すなよ。」
おそ松の声のトーンは明らかにさっきとは違っていた。
「隠してなんか「隠してんだろ」」
「わかるんだわ、俺長男だから。」
「隠しごとくらい、合ったっていいだろ。」
「別に父さんと母さんには言わないよ。
怪我のことだって適当に兄妹喧嘩したとか言っておけばいいだろ。」
「とにかく俺は」
「じゃあ俺から聞いてやるよ。
お前さ、誰なの。」
「!?」
「変な肉喰っちまったから変なのかもな。
かっわいそうにな〜。
今にも俺のこと喰い殺そうとしてる目だよそれ〜お兄ちゃん恐いな〜。」
おそ松の言葉にカラ松はカっとなっておそ松のパーカーの胸倉をつかむ。
この状況下でも六つ子の長男は余裕な顔で相手を見据える。
「俺はそんなこと微塵も思ってない!!」
「じゃあいきなり俺の腕とかに噛みついたりしないでね〜。
お前今にも人に喰らいつきそうな目してるんだもん。
化物の一歩手前になって理性が保てなくなる前にデカパン博士のところに行かなきゃだよ、カラ松。」
その言葉を聞いたカラ松はおそ松の胸倉から手を放し、両膝を床につけて自分の首を片手で抑えながら床に拳を叩きつけた。
一方、家の外にでた一松は家の近くの路地裏へと来ていた。
その路地裏には多くの猫が住み着いており、一松が来ると一斉に猫が群がってくるのだが、今日は一松の周りに猫は一匹もいなかったのだ。
そして一松は苦しそうに首を抑えながら1人路地裏で悶えていた。
「また兄さんが兄さんでなくなったらどうしよう。」
「大丈夫だよ。
ああ見えてカラ松兄さんも一松兄さんも丈夫なんだから。」
「アイツらの心配よりも…母さん達にはなんて言う?
息子より娘の心配するよね絶対」
「喧嘩したとかクマに襲われたとか言っとけばいいんだよ。」
私の周りにはトド松兄さんと十四松兄さんとチョロ松兄さんが側に居てくれている。
慰めようとしてくれてるのかな。
私はそんな兄さん達のやり取りを見てクスっと笑えば部屋の襖が開く音がして、もう一人兄さんが来た。
「なぁ、名前。
落ち着いた?」
「うんだいぶ。
でもあの…ごめんなさい、おそ松兄さん」
「え、なんでお前が謝るの?
お前は悪くないよ。」
「カラ松兄さんと一松兄さん大丈夫だよね?
今までの兄さん達のままだよね?」
「心配すんなって!!
アイツらなら大丈夫。
なんかあってもお兄ちゃん達が守ってやるから、絶対。」
おそ松兄さんは、そう言って私の頭をグシャグシャと乱暴に撫でる。
それをマネして十四松兄さんも私の髪の毛をグシャグシャにしてくる。
「うわ名前髪の毛めっためた…」
トド松兄さんが一歩距離を取って言った。
私の髪の毛はグシャグシャだ。
でも私はそれを嫌だとは思わなかった。
「もう大丈夫だから。」
おそ松兄さんが優しく笑ったからか、今までの不安が少し癒えた気がした。
十四松兄さんもそれに便乗してニカーっと笑う。
「カラ松と一松は?」
「あーうん。
疲れてるからそっとしといてやって。」
チョロ松兄さんの問いにおそ松兄さんはそう答えたが、その顔は決して笑ってはいなかった。
私は今までのようにバカ楽しい日常が戻って来てくれることを願ったが、それが叶う事になるのは思ったよりもまだまだずっと先のことだった。