松 夢小説

□強引な彼の
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「あ、書き終わった?
俺、センセーにに出しに行って来てやるよ!」

「あ、ありがとう。
ごめんね、本当は私の仕事なのに」

「いいって!
帰っても別に暇なだけだし、俺のおかげで早く終わっただろ?」

「うん、助かる。」

「ほんじゃマッハで行ってくるな!」

放課後の時間。
おそ松に日直の仕事を手伝ってもらっていた。
日誌が書き終わったので、おそ松が先生に出してくると言ってくれて助かった。
日直の仕事である教室の戸締りと、各机に忘れ物がないかの確認が出来るからだ。

窓を閉めようと、窓の外に目を向ける。
ここは四階の教室だから校庭が良く見える。
サッカー部、野球部、テニスコートではテニス部といった運動部が声を出しながら一生懸命部活に励んでいる。
綺麗な夕日を眺めながら、「あぁー青春を感じる」なんてバカげたことを思っていると、校庭の端っこから、あきらかに運動部が発声しないような声が耳に入ってきた。

「あぁ、私達はこれからどうすれば、」

「この国はもう滅びてしまうのでしょうか!」

「神よ、どうかお助けください…」

迫力のある声だなと思ってみると、うちの学校の演劇部であった。
学校の指定ジャージで10人くらいの人達が輪をつくって台本を持ちながらセリフの練習をしているのだ。
練習といえど、女子も男子も運動部に負けないくらいの声量であった。
関心して演劇部の練習を見ていると、そこである人物を見かけた。

「あ、カラ松だ」

「皆、あきらめるな!
まだ皆には俺がいる、だからどうかこの国のためにもう一度俺に力を貸してほしい!
皆の力が必要なんだ!」

「うわぁカラ松すごいな」

つい1人ゴトをつぶやいてしまった。
カラ松のあまりの演技力に驚愕してしまったからだ。

カラ松は、1年の時同じクラスでよく話していたし、委員会も一緒にやったことがある。
高校生にもなって、中2病をこじらせていて、言動が痛々しいが、優しいし、部活熱心であることから悪い印象を持ったことがない。
おそらく、松野家六つ子の中では一番優しいのではないかと思う。

演技してるカラ松、なんかすごいかっこいい。
なんか、じゃない。かっこいいんだ。
ボーっと窓からカラ松のことを見ていると、ハっと我にかえる。

「って、こんなことしてる場合じゃないか。
荷物荷物…」

こっちは、おそ松に日直を手伝ってもらっている身分なのだから、すぐ帰れる準備をしなくてはならない。
それから後片付けをして荷物をまとめた。
今すぐにでも帰ることができる。
おそ松の荷物を持って教室の外で待って、そのまま帰ることがベストであるが、
カラ松が気になってしょうがない。
おそ松はまだ来ないし、閉めた窓をもう一回開けて演劇部の練習を、カラ松を見ていた。
カラ松の役は重要なのか、案外たくさんセリフを聞くことが出来た。
私は、演劇をしているカラ松に夢中だった。
だから、人が教室に入ったなんて気になってなかった。

「名前、終わったからかえろーぜ」

「……」

「名前、何観てんの?」

「あっおそ松ごめん」

「別にいーけど…なにみてんだよ」

気のせいかもしれないけど、おそ松なんかさっきよりもテンションが低いような気がする。

「みて、カラ松だよ」

「は?カラ松?」

「そう。
演劇部が外で練習してるんだけど、カラ松すごくかっこいいんだよ!
おそ松って、カラ松の演技とかたくさん見てたりするの?」

「は?」

「え?」

嘲笑うような鼻で笑った声だった。
そのあと、目つきが変わり口の端をあげつつ、あきらかに様子がおかしかった。
なんというか、不機嫌をかもしだしていた。

「あんなののどこが良いんだ?」

「あんなのって何?
自分の弟じゃん!
カラ松の演技すごいし、カラ松はいいところ沢山あるんだよ!」

「特別お前と関係なくね」

「でもカラ松とはよく話すし、」

「それだけだろ?
他のヤツだってそうだって。」

「でも、さ」

「え、何?
お前カラ松のこと好きなの?」

「は?!」

おそ松ってば何言ってんだろうって思ったけど、でもちょっと一瞬考えた。
ここで「うん」と答えればどうなるのだろう。ちょっとこっちもイライラきてるから
「そうだよ。」と、答えてみる。
もちろん、本心じゃないけど。
でもそう思えたらいいなって。
窓をみてもう1回カラ松をみる。

やっぱりかっこよかった。
自然と笑みがこぼれた。
でもそれがいけなかったのか、おそ松から返されたのは、

「ふざけんなよ」

そう聞こえた直後、外を見ていた自分の視界が真っ黒になって何も見えなくなった。
あんまりにも突然であったから小さく悲鳴をあげてしまった。

「ひっ」

「俺以外の男、みんなってば。」

「はぁ?
何言ってんの、誰みようが勝手じゃん!」

「そんな勝手、俺が許さねぇし。」

「何それ意味わかんないんだけど…」

視界が見えないから、おそ松がどんな顔しているのかはわからない。
けれどさっきよりもっともっと不機嫌になったのはわかりすぎている。

「ねぇ、もういいでしょ?
日直手伝ってくれてありがとうでした。
もう帰ろうよ。」

「俺、アイツと同じ顔だろ。」

「違うよ、カラ松はおそ松とは違っ」

「俺とカラ松の何が違うんだよ」

「む、六つ子の兄弟なのになんでわからないの!
おそ松いつも言ってんじゃん!
俺はお兄ちゃんだから兄弟のことはなんでもわかるんだって!」

「っち」

「だいたい…カラ松とおそ松じゃ全然違うんだよ。
カラ松は優しいし、部活熱心だし、喧嘩ばっかりしてるおそ松なんかとは大違っ…んぅ」

何が起きたのか全然わからなかった。
おそ松は噛みつくように、食らいつくように唇をあててくる。
舌こそいれられてないものの、何度も角度を変えてキスしてくるもんだから、こっちも息ができなくてついつい変な声を、息をだしてしまう。

「んっ…」

「…はぁ。
んなことお前の口から言わせねぇよ。」

「馬鹿っさっきから何?
本当に信じられない…あっ」

唇が離れたかとおもうと、次は肩を引き寄せられ強く抱きしめられた。
包む様にではなくガッチりと両腕も巻き込まれている。
自力で逃げ出すことは不可能だ。

「本気で嫌がらねぇとやめねぇから。」

「っ、なにそれ。」

「俺を妬かせたのは、名前だろ。
ちゃんと責任とれよ。」

「そんなっ」

「いいの?
俺の好きにしても」

「ダメに決まってるでしょ!
嫌がれって言ったって、おそ松に力で勝てっこないし!!」

「…ほんとさぁ、見てるだけで腹立つよな。」

「っちょ…ぁっ」

おそ松に押し倒される。
机と椅子があるからとても狭し、せっかく机整えたのに。
こんなとこで押し倒すとか何を考えてるんだろう。

「…わかんだろ?
本気で嫌がってみろよ。
それができないならお兄ちゃんの好きにしてもいいってことだろ?」

「何言ってんの?」

「こんなところで言うとは思ってなかったけど。
壊したい程お前のことが大好きなんだよ…俺は。」


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