松 夢小説

□色松と恐怖体験
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素早くカラ松兄さんは私の両腕を自分の両手で押さえつけ、私の上に馬乗りをする。
一松兄さんは私の両足を1つに束ねてその上に乗っかり、足首をおさえている。
カラ松兄さんと一松兄さんは、それぞれお互いを背中合わせにして私の上に乗っかっている。

私には兄が6人もいるせいで、兄弟喧嘩がない日なんてなかった。
でもこんな風に2人ががりで手足をおさえつけられるようなことはされたことがない。
特に、カラ松兄さんの両腕をつかむ強さは尋常じゃなかった。

「痛っ」

元々、カラ松兄さんはバカ力だからこんな風にガッチリ掴まれていたらいつか絶対に骨が折れる。
そんな痛みに耐えながらも、私はカラ松兄さんの顔を下から見つめる。
カラ松兄さんの目に光はなくて、ジト目でゴミを見るような目で私を見つめる。
多分、今のカラ松兄さんには私のことは「自分の餌」だとしか思われていないのだろう。
ウェイトレスの言っていたことが本当なのであれば、もう2人はグール化してしまったということになる。
2人の兄はもう人間じゃない。
私の知ってる兄さん達ではないことを、すでに私は理解していた。
でもそんな現実をどうしても受け止められなかった。

何時間前まで一緒に笑ったり文句言いあったり冗談言いあったりしてたハズなのに、ただ変な料理を食べただけでこんなにも人は豹変してしまうものなのだろうか。

そんなの、あんまりだ。

「最初は、新人2人に食べてもらうとしましょう。
あぁ、なんて残酷なんでしょうね。
実の兄達が実の妹を生きたまま食す、なんて。」

今思ってみれば、私は少しブラコン気質なのかもしれない。
さっきまで他のグール達におさえつけられている時は恐怖でしかなかったのに、それが兄さん達になった途端、不思議と少し恐怖が和らいだ。
もしかしたら、兄さん達にこうされて本望だって自分の心の底は思ってたりするのだろうか。
いやでも、さすがにないだろう。
それが本望であれば、こんなに血の気が引いて身体が震えるわけがない。
こんなときでもノリツッコミができるなんてまだまだ自分は元気な証拠だ。

「それでは、グーラになりそこないの残念な人間は、私達の餌になって下さい。」

その言葉とともに、カラ松兄さんと一松兄さんは口を大きく開いて私の身体に牙を立てた。
 
「いっ痛い痛い痛い痛い!!!」

カラ松兄さんには首筋を、一松兄さんには右ふくらはぎを噛まれている。
今まで感じたことのない最悪な痛みだった。
割とすぐ肉が引きちぎられるのかと思えば、そうもいかないらしく、ギリギリと皮膚を食いこまれるだけの行為・・だったが、だんだんと噛まれている部分が熱くなってきて、血が首筋から肩にしたたるような感覚に陥った。
一松兄さんが噛みついているふくらはぎからも血が溢れてくる。
カラ松兄さんも一松兄さんも噛みつく力は相当だったようで、言葉に表せないくらい酷い痛みだった。

「ごめんなさい!!
ごめんなさい!!!」

だからこうやって声をだして叫んでいるのだが、叫んだところで痛みが和らぐわけではない。
そんなことはわかっている。
でも、これは声をだすなという方が無理だ。

「に、兄さ、ん」

必死にで兄の名前を呼ぼうとしても聞いてくれるハズがない。
痛みと戦っている私はふと、紅く塗りつぶされている天井をみて思った。

紅って、「おそ松兄さん」の色だと。

今更ではあるが、おそ松兄さんの顔が頭から離れない。
おそ松兄さんの他にも、チョロ松兄さんの顔も、十四松兄さんの顔も、トド松兄さんの顔も。
今朝、ロクにみんなと話してこなかったことを今になってものすごく後悔した。

「おそ松兄さん…」

兄弟の中でも一番クズで最低で変態で小学生のような精神年齢だが、兄弟の中で一番頼りに出来る兄の名前が無意識に口からでた。
すると、カラ松兄さんはなぜか一瞬噛みつくことをやめた。

私はそれに「え?」と一瞬おもっていたが、すぐにカラ松兄さんは、私の首筋から滴っている血を舐めだした。
まだ一松兄さんがかぶりついているふくらはぎの痛みはあるものの、カラ松兄さんが首筋への攻撃をやめただけでも、だいぶ楽であったが、気持ち悪い程カラ松兄さんは、やらしく私の首筋の血を舐めとっていく。
なんせ、首筋からは傷口から中々の量の血があふれだしてきているから。
舐めても舐めても、血はとまらない。

「ひっ、あっ…んぅっ!」

しびれをきらしたのか、カラ松兄さんはグロテスクなことになっている私の首筋をパクっと甘噛みをすると、血を吸いとる行為が始まった。
ジュルジュルと汚らしい音を立てて、首筋からでる血を吸い取っている。
あまり気持ちよい行為とは言えない。
が、

「うぁ、あっんっ…」

普段、私はこんな甘ったるい声を出さない。
そりゃそうだ性行為すらしたことがないのならば異性とキスしたことすらない。
けど割とまんざらでもないのかもしれないのは私も変態だからだろうか。

首を吸っているカラ松兄さんに対して、一松兄さんはまだふくらはぎに噛みついている。
もう同じところを噛まれているせいか、痛いとかいう感覚がなくなってきた。

もうこれは末期だ。

そして私はだらしのない呼吸をしている。
食べるならはやく食べてしまえばいいのに。
カラ松兄さんはなぜか、一端首筋から離れてうつろな目で私を見つめた。

「カラ松、兄さん」

掠れた声で、涙をこぼしながら、私は大好きな兄さんの名前を呼ぶとそれに反応するようにカラ松兄さんは大きく口を開けて、また首筋に向かう。
また、痛いのがくると身体を強張らせていると、拘束されていた腕がパっと解放された途
端、耳元でカラ松兄さんの声が聞こえたと思えばカラ松兄さんが私を優しく抱きしめた。

「名前、ごめんな…」


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