松 夢小説

□色松と恐怖体験
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「カラ松兄さんまだー?」


「オラ早くしろクソ松」


「ちょ、ちょっと待ってくれ」


「ッチ、これだから…」


「スマホも圏外だし、これってヤバいんじゃないのかな。」


「フン、案ずるな!
まだヤバいと決まったわけでは…」


「「いや、ヤバいから」」

現在、私ら兄妹は絶賛遭難中である。
事の始まりは、カラ松兄さんが"ドライブしたい"と言いだしたことからであった。


カラ松兄さんは、テレビでやっていた旅番組に影響され、車で山に行きたいと言った。
兄さんたちは皆運転免許を持っているから車の運転はできるものの、六つ子全員がクソニートであるから車を買うような金はない。
だから車といっても「レンタカー」だ。
そんなカラ松兄さんの提案に、他の兄さん達が答えるわけもなく、

「僕ライブで忙しいから無理」

「クソ提案」

「車よりやきうやきう!!」

「ごめーん、僕興味ない♡」

「つーことで、名前行って来い。
これは長男命令だから。」

そしてこの始末である。

「クソ長男にクソ兄貴共!
いいか良く聞け私は行かないぞ!!」

「まぁ、いいじゃん?
これも兄孝行の1つだって思えば。」

「兄孝行?!
親孝行みたいに言わないで!
ってか何だかんだ全員暇なんだからドライブくらい行ってあげればいいじゃん!」

「パチンコあるし」

「ハロワあるし」

「猫に餌やんないと」

「やきうやきう!」

「僕バイトあるし〜」

「かぁぁぁ!もうわかったよ!
私が行けばいいんでしょ!」

こんな具合で、いつも私から勝負を引いてしまう。
兄達との喧嘩では私が勝ったことが人生で一度もないからだ。
勝算のない喧嘩には手を出したくない。

「名前行ってくれるのか!」

「うん、まぁ…」

私が行く発言をした直後、カラ松兄さんは若干涙目で私にしがみつく。
そして他の兄弟の「計画通り」という顔が私を余計苛立たせる。

「クッソ、誰のおかげだと思ってんだ。
(まぁでも、ここまで他の兄弟に拒否されてたらカラ松兄さんが可哀そうに思えてきたし…昼ごはん奢ってもらおう。)」

「じゃあ、もう1人くらい一緒に」

そうカラ松兄さんが言った途端、私のことを嘲笑ってた5人はサっと視線をそらす。
それをいいことに、私はあることを思いつく。

「じゃあ、私選ぶね。」

「「「「「!?」」」」」

「…あ、僕バイトの時間だ!じゃ!」

「さてと、ハロワハロワ」

「やきう行ってくる!」

「俺パチンコー!」



次々と早々に兄弟が部屋から姿を消していく中、出遅れた1人を捕まえる。

「お、俺も猫に餌…」

「一松兄さん、行くよね?」

「は!?
誰がクソ松と一緒にドライブなんか、」

「床下に隠してる一松兄さん一押しのエロ本資源回収に出してもいいんだけどね。」

「行く」


そんなこんなで、一松兄さんと私とカラ松兄さんでドライブに行くことになったのだが、カラ松兄さんがレンタルした車はいまどきカーナビがついていない一番安いボロ車だった。
見た目がなんだか危なさそうだし、こんな車で本当にドライブなんてできんの?と言われてもおかしくない状態だった。
最初は不安でしかなかったのだが、カラ松兄さんの運転が上手いせいなのか、思っていたよりも快適であった。
車に乗る前はゲンナリしていた一松兄さんも実際に乗ってみればさほど嫌ではなかったらしく、めずらしく機嫌がよかった。

ただそれは、出発してから一時間弱くらいの話である。

目的の山に車が進んでいったかと思えばさっきの快適な運転とはうって変わって激しく揺れるわ、それが原因で一松兄さんは吐くわでテンヤワンヤだった。
挙句の果てにカラ松兄さんは、「これは道なのか?」という木だらけの道を進み続けるしで、結局冒頭のような状態なのだ。

カラ松兄さんは、道を間違えたと来た道を戻ろうとも、先はずっと林ばかりで一松兄さんと私の怒りは貯まるばかり。
私はスマホでどうにかしようとしても、圏外でインターネットもアプリも使えない。
しかも、空は曇天。
いつ雨が降ってきてもおかしくない状態であった。

「カラ松兄さん、これってモロ遭難なんじゃ」

「ッチ、どっかの誰かがドライブしようとかバカなこと言いだすから…」

「ねぇ兄さん、下調べちゃんとしたの?」

「俺なりにはしたつもりだが…あ?」

「「あ?」」

カラ松兄さんが唐突に車を止めるから、なんだ?と思って一松兄さんと窓の外をみれば、こんな林ばっかの山の中に綺麗にそびえたつ紅い建物が目に入った。
その建物を見るために、私達3人は車から降りて、建物に近づく。

「…なんだ、アレ?」

「下調べしたって、クソ松テメェ言ってただろうが。」

「いやでも山の中に建物があるなんてどこのサイトにもレビューにも書いてなかったぞ。」

「じゃあ、開店したてってことなのかな?」

「にしては悪趣味すぎ」

一松兄さんの言うとおり、こんな緑がたくさんある山の中で、紅い建物を建てるとか悪趣味だとしか思えない。
建物にもっと近づくと、ある看板が目に入る。

「「「レストラン?」」」

白い看板に、建物と同じ紅い文字で"レストラン"とだけ書かれた文字。
それ以外の記載はなく、その言葉だけが書かれただけの看板であった。

「こんなとこにレストランとか、誰も来ないでしょ。」

「まぁそんなこと言うなよ一松。
レストランなら、ここで昼を食おう。」

「いやいやいやカラ松兄さん、私達遭難してるってわかってる?!
呑気に昼飯食ってる場合じゃ、」

「だからここに入るんだろ。
何か教えてもらえるかもしれないしな。
お前達も腹空いただろ?」

「たしかに、腹は空いてるかも」

「一松兄さん?!」

「こんなとこにレストランとかおかしいけど見た目ボロくないし、むしろ新しく見えるから本当に新しく開店したところかもしれないしな。
あ、言っとくけど俺は金ださねぇから。」

「フッ、心配するな…。
ちょうど昨日、神の恵みを受け取った。」

「パチンコで勝っただけだろ、ったくいちいちめんどくせぇ」

そんな会話をしながら、2人の兄はレストランの入り口へと足を運ぶ。
私はそのレストランの外装が気味悪いせいか近づきたくはなかったが、

「(いうて私もお腹空いているしなぁ)」

空腹には敵わなかった。
そう考えたら、仕方なく2人についていくしかなかった。


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