松 夢小説

□一松が変わった理由
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「ねぇ、名前って好きな人いるの?」

「え、何いきなり」

「クラスの子と廊下で話してるのおそ松兄さんが聞いたって。」

「ただの女子の会話だよ」

「…そう」

学生の頃の一松はとても真面目であった。
六つ子の中でも勉強ができる方であり、宿題やテストに関してもきちんと取り組んでいた。
そんな真面目な一松も気になる女の子がいるのである。
中高一緒で、一緒のクラスになる確率も高く、よく仲良くしてくれる名前だった。
が、昨日おそ松に「お前とよく一緒にいる女子が好きな男いるとかって話してたぞ」という話を聞いて、つい本人に聞いてしまったのだ。

「あ、でも一松になる言えかも!
教えてあげようか!!」

「え、何を」

「私の好きな人だよ」

「…」

やはり好きな子がいるというのは本当であったのだが、一松は「好きな子がいるかいないか」だけ聞きたかっただけであり、「誰か」までは聞きたくはなかったのだ。
可能性は低いが、「もしかしたら自分かもしれない」という希望を密かに持っていたからである。
自意識過剰なのも一松自身はわかっているが、中学生からの仲であるから「もしかしたら」と思っていた。
が、今の名前の「教えてあげようか」という言葉でその可能性は打ち砕かれたのだ。

「誰?」

「隣のクラスのね、梅竹くんかな。」

「し、知ってるよ。
すっごいモテるんだっけ?」

「うん。
委員会一緒で、しかも隣の席なんだけど、とっても優しく色々教えてくれるし、頭も良いし、友達いっぱいいるらしいしすごい良い人だなーって。」

「そうなんだ…」

「あ、でも内緒ね。
お兄さんとか弟くんにもクラスメイトにも絶対に内緒ね。
一松にしか教えてないんだからね!!」

「わかった内緒にしとくよ…。
でもなんで友達とかクラスメイトには言わないのに僕には言うの?」

「んーなんとなく?
一松なら信用できるし、付き合い長いし、仲良いし。」

「え…あ、ありがとう。
そんなこと言われるなんて思ってなかった」

内心、それは素直にうれしいと思った。
が、それはあくまでも「友達」としてという意味であるにすぎない。
自分は好きなのに、相手は自分のことを「仲の良い異性」という目でみている。
それが余計に悔しくて、これ以上名前の話を聞いてると、胸が張り裂けそうな気分になっていた。

「応援してね」

「うん、するよ。」

「ありがとう。
でも、正直あんまり成功するとは思わないんだよね。
相手すごいモテるし、彼女持ってそうだし、それに私まだ彼氏いたこともないしさ。
告白したこともされたこもないからもう完全な未熟者だし。」

照れくさそうに頬を赤らめて言う名前を見ると、不意に鼓動が速くなるが、その顔は自分に向けてやって欲しいなんて言いたくても言えない。
ただ自分は彼女を応援するしかないのだ。

「多分、名前なら大丈夫だよ。」

「根拠は?」

「なんとなくかな。」

「なんとなくかぁ。」



「え?!
一松と仲良いあの子梅竹のこと好きなのかよ!」

「うん」

おそ松が部屋いっぱいに響く声で驚く。
その横で「うるさいなぁ」とチョロ松は耳を塞ぐ。
おそ松のその言葉に、トド松もスマホをいじりながら、

「僕アイツ大嫌い。
アイツ女子にはモテるけど最低男だよ。
つーかアイツモテてるせいで、僕に全然女の子寄ってこないんだよね。
こんなに可愛いのにさぁ…」

「はぁ?
お前自分可愛いとか思ってたの?
恐っ何それ末弟恐ッ!」

「黙れクソ長男」

「でも、名前が選んだ人だから僕は文句も言えないし。」

「あのさぁ、一松。」

いきなり立ちあがったおそ松は、「もっと色々爆発させたら?」と言った。
それに「は?」という顔をする一松に対して言葉をたしていく。

「お前はもっと変わった方が良いよ。
カラ松は演劇部で、十四松は野球部で色々成功してるみたいだし、トド松だってこんなにブリッ子ちゃんだし、チョロ松なんてこんな真面目ちゃんになっちゃってさ。
お前も変わった方が良いよ。」

「ってか、それおそ松兄さん言えたことじゃないよね。」

「たしかに。」

トド松とチョロ松が即ツッこむ。
そんなおそ松の言葉に1人反応したのは一松だけだったのだ。
変われと言われても、どう変わればいいのか。
それを考え続けても答えが出ることはなかったのだ。

 
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