松 夢小説
□肉食系肉の攻略法T
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松野カラ松は妙な特技を持っている。
一瞬で、まるで別人のようなイケメンになる能力である。
彼は、イタズラがてらに私にそれを仕掛けてくるのだ。
「よお、ブス」
等身が高くなり髪の毛の色も青くなり、顔も整っていて服もセンスの良いものに変化している上に性格も多少変化している。
ただ唯一変わっていないのは声質だけだ。
「今日もそのアホヅラさげて外を出歩いて来たのか?」
「いや、普段のお前の顔も相当アホヅラだけど。」
「お前みたいなブスを好きになる人間なんて、俺くらいだろうな。」
「さいですか」
「ブスはブスらしく俺様に身を委ねていればいいんだよ。
ったくドンくせぇ野郎だな」
こいつはカラ松であってカラ松ではない。
いくらイケメンでも、いくら肉食系でも、いくら抱きしめられても、いくら壁ドンされても全然心が動かされないのだ。
「おい聞いてんのか」
強く腕を掴まれて、近くにあった壁へと追い詰められて、いつもの壁ドンをされる。
これ、流行ってるからって何度も何度も繰り返しやられてもトキメキもクソもないのだ。
「フッ、どうだ?
これでお前の逃げ場はなくなったぜ?」
普段のカラ松だったら、こんなセリフを吐いただけでもイタくて堪らないのに無駄にイケメンだから顔とセリフが合っている。
だがしかし、私はそんな言葉にひるむことは絶対にないのだ。
なぜなら、私はこのイケメン化した松野カラ松野攻略法をしっているからだ。
「だんまりか?
俺に壁ドンされて声すらでませんってか?
ブスのクセにって…え?」
「酷い…。
ブスだとかドンくさいだとか、なんでいつもそんなこと言うの?
こっちはすごく傷ついてるのに…なんで気づいてくれないの?」
肉を肉で巻いて食べる肉食系肉である松野カラ松は女の子の涙に弱い(ハズ)なのだ。
「なっなにも泣くことねぇだろ!」
「わざわざ気にしてることを連呼しなくても…」
「な、泣くんじゃねぇよ…」
私の演技はめちゃくちゃ上達したと思う。
芸能人も顔負けするんじゃないかと自画自賛してしまうが、泣き演技が習得できている。
「ついイタズラで…ごめんな。」
手の隙間から目を覗かせると元の松野カラ松に戻っている。
今日も攻略は成功したようだ。
「ううん。
私は今のままのカラ松が好きだから…このままでいてほしい。」
「あぁわかった。
本当にすまない、しばらくこの技は封印する。
クローズ・オブ・マイ・もう一人の俺。」
なんてちょろいのだろうか。
そして、なんてイタイのだろうか。
「そうだ、お詫びにチビ太の店で奢る。
今日金が入ったんだ。」
「え、それって給料?
脱ニート!?」
「昨日、パチンコで勝ってな。
あ、ブラザー達にはナイショだぞ。」
「そのパチ代は親の金…だよな、きっと。」
「フッ、マミーからの贈り物だ。
なんて俺は罪な男ギルトガイ」
「あーわかった。
さっさと行こうさっさと。」
このような何の変哲のない日常がおくることができるくらいで丁度いい。
何の刺激も要らない。
今のままが一番なのだ。