松 夢小説
□本気が出せない理由
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たまたま通りかかった路地裏で、実に見慣れた人物が3、4人のグループにリンチをくらっていた。
「カ、カラ松だよね?」
「名前…どうして、」
カラ松の顔をみると、殴られた頬に切れた唇。
喧嘩勝りなカラ松が負けるなんてことは早々ないはずなのだが、と思いながらも3、4人の間を素早く通り抜けてカラ松に寄りそう。
「バカッ来るなっ…」
「で、でも」
「おい、この女こいつの彼女かよ」
「らしいぜ?」
そう口々に相手方は、馬鹿にするかのように私達の方をみる。
汚らしいその目にイライラする。
「もう下がってろお前..」
「い、いやでも血でてるし、」
その時、後ろでブワっと嫌なものが振りかざされる音が聞こえた。
後ろを振り返る前に、何が迫ってるか理解できた。
これは完全にやられると血の気が引くとと同時に、目の前にいたカラ松がものすごい勢いで立ちあがったのが目に見えた。
その直後に聞こえた鈍くて痛い音は私をゾっとさせた。
「ぅぐっ」
とっさに私を庇ってくれたカラ松は、苦しくも痛そうな声をだしてその場にくずれて膝をつく。
相手方はうんざりするほどに爆笑し、私は青ざめ、カラ松はうずくまったままだ。
その仕返しができるハズもなくただただその場でワタワタするだけの私は余計に彼らの笑いをプラスさせたらしい。
「つーかさぁ、その子パっと見可愛い子かと思ったら案外普通じゃね?」
「フ、フツー!?」
「こんな子より俺の彼女の方が可愛いわー」
「彼女いるんかい!」
「でもさでもさー。
もし、この子譲ってくれんならお前許してやってもいいよー?」
「…な、何勝手n「何勝手なこと言ってんだよ」」
辛そうにうずくまっていたカラ松の口が開く。
ゆっくりと立ち上がるのかと思いきや、チョロ松にも負けない速さで一番近くにいた男の腹部を殴る。
その男はうめきながらその場に倒れこむ。
その様子をみた他の仲間は完全にカラ松にビビってしまい、倒れ込んだ男の首根っこを無理矢理掴んで逃げようとしていたが、それを逃がすまいとカラ松はまた近くにいた男の肩をメリメリと鷲掴する。
「ヒッ」
「…アレ、返せよ」
「ッこんなのくれてやらぁ!」
「クソが!!!」
そんな負け犬の遠吠えを吐きながら、男たちは逃げ際に何かを投げ、肩を掴まれていた男はカラ松の手を振り払い、一目散に逃げていく。
それに私は茫然としてその場に立ちつくしていた。
敵を瞬殺したカラ松の強さは伊達じゃない。
「大丈夫か。」
「大丈夫だけど、どうして最初から本気ださなかったの?
カラ松ならすぐ、」
「まぁ、これ奪われちまったからな。」
床から拾い上げたものは、私がカラ松にプレゼントしたサングラスだった。
としても、こんなサングラスのために今まで殴られてたかと思うと胸が苦しい。
「お前が来てくれて助かったぜ。
勝利の女神が舞い降りてきたおかげで、俺はクールにラストシーンを決めることができたのだからな。」
と、サングラスをかけてカッコをつけるが実際はどこもかしこも痛いはずだ。
無理しおって。
「別にサングラスなんていつでも買ってあげるのに。」
「このサングラスは特別なのさ。」
「なんでどこもかしこも痛いハズなのににカッコつけるかなぁ!
いったいねぇ!!」
と、私はカラ松の背中をバシンと叩けば「うがああ!」と叫び出すカラ松に「ごめん」と即謝る。
たしか庇ってくれた時のことを思えば強烈な痛みだったのかと感じる。
「またチョロ松に叱られるな…」
「あぁ手当て?
チョロ松しかまともに手当てできないもんね。」
「この前も説教されたばっかりでな」
「じゃ、私がしてあげよっか。
お礼とごめんねしたいから。」
「全く、俺のカラ松girlは可愛いな。」
「黙れ」
【カラ松が本気をだせない理由】
(ただいま…チョロ松しかいないのか。)
(おかえりって、カラ松どうしたのそれ!)
(いや、ちょっと名前に)
(さすが名前不器用の極み。
ってか、また外で喧嘩したの!?)
(あ…バレた)