tennis
□my dear…
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君と一緒に行けたらって、ずっと思ってた。
君の心にずっと近づきたかった。
君の心の中の真実を知りたかったんだ。
もしも君が、たった一言言ってくれたら、僕は地獄に堕ちたって構わなかったんだよ…
僕は…ずるいね。
自分の気持ちは言わないで、君の気持ちを確かめようとしてた。
でもね、英二…いつだって、先に目を逸らすのは君の方。
いつも、確かに繋いだはずの手をいつの間にか君が放す。
だから、口にしたのは僕だけど本当は、『さよなら』を先に言ったのは君なんだよ。
だから僕は、君が僕から離れたいのだと思って、言えなかったんだ。
君のことが好きだって。
あの笑顔が好きで。
僕には時に少し眩しすぎたけれど…
君は、僕の太陽だった。
あの夏の日、僕は君に引き止めてほしかったんだ。
何度も何度も振り返ったよ。
この手を放さないでって、
視線を逸らさないでって、
祈るように願った。
それは叶わなかったけれど。