tennis
□my dear…
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それは、遠い記憶。
〓my dear…〓
ずっと昔、封印したものがあった。
それを今更カタチにしてどうしようというのか。
…何やってんだろ、俺。
多分、残しておきたいのだと思う。
今更、どうしようなんて気は本当にないんだ。
ただ、このまま消してしまうのが、無性に嫌でたまらなくて。
俺は、手紙を書くべく、ペンを手にした。
それは宛名のない手紙。
きっと、永久に叶うことのない、一つの真実。
***
《切欠がなんだったのか、今ではよくわかりません。
気がついた時にはもう、無性に君が好きでたまりませんでした。
もっとも僕は随分長い間その気持ちを、知らずにいたのだけど。》
《『ソレ』の正体に気がついたのは、中学の卒業式の時でした。》
『これで、お別れだね。』
《別れ際の君の言葉が酷く痛くて。苦しくて。》
『そう、だね。』
《僕は、繋いでいた手を放しました。》
『…英二、』
《その時、君があんまり悲しそうな顔をして僕を見るので、僕はなんだか泣きたくなってしまって、見つめ合っていた目を逸らしました。》
『……サヨナラ。』
《そして別れの言葉を言いながら微笑む君を、抱きしめたくなって、それで初めて自分の気持ちに気がついたのです。》
『不二っ!』
《でも、言えませんでした。》
『あ…えっと…外部行ってもまた会おうなっ!』
《そのまま暫く君と会うことはなくて、僕は結局ソレを封印したのです。――君への、恋を。》
《それから約二年振りに会った夏の日、あれが僕達の本当の別れでしたね…
僕は今でもあの時のことを思い出します。
もし、君に気持ちを伝えられていたら、何か変わっていたのだろうかと。
そんなことは万に一つもないのに、何故だか不思議とそう思うのです。
今更、こんなことを言ってもどうしようもないのはわかっているけれど。
最後に、言わせてください。きっと最初で最後だから。》
《僕はずっと、君を愛していました。》