小部屋の片隅で
□闇を抱いて
闇に抱かれて
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「これはね、みーんな君が不幸にした人、これから不幸にする人達だよ
中には死んじゃった人もいるね。君の本当の家族とか。
ぼく思ったんだけどさー
君が生まれてなんか来なければ、パパもママも妹ちゃんも死なずに済んだかもしれないよね?
アハハハハっ…だってあの時、妹ちゃん達は作られた君を護るために戦って死んじゃったんだし」
『───っ!!』
思わずソレから視線を逸らし唇を噛み締める
「お兄ちゃん」
その声に反射的に振り返る
自分と似た虚無の瞳をした少女と目が合った
「お兄ちゃん酷いよ。どうして助けてくれなかったの…?」
「お前がいなければ、お前さえいなければ俺は英雄になれたのに」
少女と並び立つ虚ろな瞳のルーク
突如襲う吐き気に口を押さえる
何とか堪えたが気分の悪さは最高潮だ
『ちっ…お前いい趣味してんな』
「ぼくの趣味じゃないよ?君の本心だよ」
「お前が」
最も聞きなれた声
ビクッと肩を揺らし、ゆっくりと振り向く
そこには虚ろな瞳ではなく睨むような、最も憎悪する敵に向けるかのような瞳
赤い双眼が逃れられない呪縛を紡ぐ
『ジェ、イ…ド……』
「お前なんか居なければ、私の見たくない過去が蘇らなかったのに」
ガッと凄い力で首を掴まれる
ガクリと足から力が抜け、ぐずぐずと床に座り込む
「私がお前を好きだって?」
指の痕が付くんじゃないかと思うほどの力
首に食い込む爪の痛みと流れる鮮血
そんなこと気にするより、ジェイドのその先の言葉を、
「お前なんか死ねばいいのに」
聞きたくなかった───…
「ね?君はみんなを不幸にした
だから君は幸せになっちゃいけないんだよ。」
クスクス笑いながら、少年はうつ向いて動かないレイクの顎に手を掛け、上を向かせる
いつの間にか彼らは居なくなり、暗い暗い執務室は二人だけの空間へとなっていた
虚ろな瞳を見て更に少年は楽しそうに笑い抱きつく
そして耳元で囁いた
「だからね、幸せなんて感じちゃいけないよ。君は一生孤独で生きなきゃ。」
まるで子供に言い聞かせ母親のように優しく囁く
君はぼくで
ぼくは君だから
虚ろな紫水晶の瞳から一滴の涙が零れた
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