小部屋の片隅で

□闇を抱いて
 闇に抱かれて
2ページ/3ページ

「これはね、みーんな君が不幸にした人、これから不幸にする人達だよ

中には死んじゃった人もいるね。君の本当の家族とか。

ぼく思ったんだけどさー
君が生まれてなんか来なければ、パパもママも妹ちゃんも死なずに済んだかもしれないよね?

アハハハハっ…だってあの時、妹ちゃん達は作られた君を護るために戦って死んじゃったんだし」




『───っ!!』



思わずソレから視線を逸らし唇を噛み締める



「お兄ちゃん」



その声に反射的に振り返る

自分と似た虚無の瞳をした少女と目が合った


「お兄ちゃん酷いよ。どうして助けてくれなかったの…?」




「お前がいなければ、お前さえいなければ俺は英雄になれたのに」



少女と並び立つ虚ろな瞳のルーク





突如襲う吐き気に口を押さえる

何とか堪えたが気分の悪さは最高潮だ




『ちっ…お前いい趣味してんな』



「ぼくの趣味じゃないよ?君の本心だよ」





「お前が」




最も聞きなれた声


ビクッと肩を揺らし、ゆっくりと振り向く


そこには虚ろな瞳ではなく睨むような、最も憎悪する敵に向けるかのような瞳




赤い双眼が逃れられない呪縛を紡ぐ




『ジェ、イ…ド……』




「お前なんか居なければ、私の見たくない過去が蘇らなかったのに」




ガッと凄い力で首を掴まれる
ガクリと足から力が抜け、ぐずぐずと床に座り込む





「私がお前を好きだって?」





指の痕が付くんじゃないかと思うほどの力
首に食い込む爪の痛みと流れる鮮血



そんなこと気にするより、ジェイドのその先の言葉を、







「お前なんか死ねばいいのに」






聞きたくなかった───…















「ね?君はみんなを不幸にした
だから君は幸せになっちゃいけないんだよ。」





クスクス笑いながら、少年はうつ向いて動かないレイクの顎に手を掛け、上を向かせる


いつの間にか彼らは居なくなり、暗い暗い執務室は二人だけの空間へとなっていた





虚ろな瞳を見て更に少年は楽しそうに笑い抱きつく



そして耳元で囁いた




「だからね、幸せなんて感じちゃいけないよ。君は一生孤独で生きなきゃ。」




まるで子供に言い聞かせ母親のように優しく囁く





君はぼくで
ぼくは君だから




虚ろな紫水晶の瞳から一滴の涙が零れた





次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ