小部屋の片隅で

□裏切者の末路
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「ふふふ。そうだね。
イオンは君が殺したんだもの。居るはずないよね」



醜く笑い、姿を変えていく


“イオン”の姿から髪も服も真っ黒なモノに変化した。


瞳は左だけ血のように赤く、右は暗い紫色をしている
不気味な表情 高い子供のような声


背筋が凍り、息ができなくなる


「ねぇアニス。君は人殺しなんだよ?
それなのにどうして君は笑っているんだい」


「あ、あたしは…っ!」



「イオンやアリエッタ、イエモンやタラマ
君がモースに情報を横流しする裏切者だったと知ったらさぞ君を恨むだろうね。

本当は無駄な犠牲。君のせいで死んだんだから」




「うるさい!うるさいうるさいうるさい!!
あたしだって、裏切りたくなかった。イオン様達を亡くしたくなかった…
でも、パパとママを人質にとられてたから……仕方がなかったんだよ!!」



黒いモノは相変わらずニタニタ笑っている。


アニスは体が震え、吐き気がする




「結局君は『人質にとられてたから仕方がなく殺した』んでしょ?」



「あたしは殺してない!殺したのは…」




「導師イオンを殺したのは確かにモースだね。
でも君だってあの日、あの場所で見殺しにしたじゃない。

導師守護役のくせに」




その場に崩れるように座り込む

『導師守護役のくせに』
これはあたしが一番わかっている。
守るためそばにいたのに、守りたかったのに…あたしが裏切者だってわかっても、イオン様は笑ってた。

イオン様……本当にあたしを許してくれてたの?










そんなアニスに音もなく近寄り頭に手を置こうとした瞬間
アニスは最後の抵抗と言わんばかりに近くにあったカップをソレに投げるが、
カップはソレをすり抜け机の足にぶつかり砕け散る



ニヤニヤ笑っていたソレから笑みが消え、アニスのツインテールを掴みあげて顔を近付ける



「アニス。君も気づいてるはずだ。
君は罪人。罪を背負って生きなきゃいけない


だから、幸せだと勘違いしちゃいけないよ?君は一生孤独で生きなきゃ

裏切者は、暖かい光を求めちゃいけないよ」





虚ろになった灰褐色の瞳から一筋の涙が零れた。



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