もう一つの世界
□第十七預言
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マルクト帝国 グランコクマ
ノームリデーカン・レム・28の日
譜術を放つと同時に噴き出す血飛沫。
切り裂かれた腹部を手で覆っても、流れが留まる事のない血。
身体から全体を痛みと共に襲う死の感覚
意識を手放せば、楽になれる。
全て終わった。
大地も崩落を免れ、ヴァンも倒した
もう、俺の出来る事は…ない。
《レイク・ミュレッジ。私の完全なる同位体よ。》
まるで水の中に沈んでいくように遠ざかる、誰かの声
《まだ死んではならぬ。
栄光を掴む者が我を完全に取り込む前に、我が力を微量だがお前に────》
一気に水から引き上げられたように、耳に音が戻る。
さっきから俺の名を呼んでいるのは───…
『んっ……ふぁぁ…』
朝日が差し込むベッドの上で両腕を伸ばす。
『っ…いたたたた…』
伸びた瞬間、腹部の傷口が引っ張られ激痛が走る。
「おや、おはようございます。」
『あ、おはよ』
静かに開いた扉から現れた赤い目の軍人。
右手には分厚い書類を持ち、左手には剣を抱えていた。
『ん〜…はぁ。
あれ?ジェイド今何時?つーか訓練?』
目を擦りながら剣を指差す
「ああ、これですか?先程預かった剣です。
時間は今朝の9時ですよ」
それを聞いたレイクはもぞもぞベッドから下りて、同じ様に青い軍服を身に纏う。
手櫛で髪を整え、剣を奪い取る。
『これガイにだろ?用事あるから序でに持ってくよ』
「ではお願いします。私はこれから会議室へ行きますので」
『うん。じゃぁな』
互いに笑い、二人は真逆に向かって歩き出した。
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