小部屋の片隅で
□誕生から消滅 その時まで
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涼しげな風が肌を撫でる。
太陽はさんさんと輝き暖かい光を全ての生き物へ与え、草花の生い茂った草原に寝転ぶ少年は気持ち良さそうに目を閉じている。
再び風が吹き少年の赤い髪をなびかせると、甘い香りが漂ってきた。
「ルーク、こんなところで寝ていると風邪ひきますよ」
ルークと呼ばれた少年が体を起こし声のした方を見ると、蜜色の髪と眼鏡の奥に見える赤い瞳、そして見慣れた青い軍服に身を包んだ男性がこちらを覗き込んでいた。
「いい天気ですね」
「そうだな」
よっこらしょ、とわざとらしく声に出してルークの隣に腰を落とす
ピーピー鳴いていた小鳥たちが空に舞い、辺りは風の音しか聞こえない
「なあジェイド、」
「どうしました?」
ジェイドと呼ばれた男性はルークを見るが、再び仰向けに寝転び、ルークはただ空を見ながら独り言のようにつぶやく。
「俺さ、この世界をやっと好きになれたんだ」
はにかんだような笑顔を見せる。
ジェイドもルークと同じように寝て、空を見上げる
その先はどこまでも続く青空で、終わりは見えない。
「……そうですか。私は全て嫌いです」
「なんで…?」
不思議そうな表情でジェイドを見ると、ジェイドはルークの手に自分の手を重ねて強く握る
「あなたを世界で一番愛してると言ったこの唇で、世界のために死ねと言う。
そんな矛盾を言わなければいけない世界も、言う私も、それを受け入れたあなたも、嫌いだからですよ。」
もとの位置に視線を戻し、ルークから手を離す
「……ごめん。」
太陽が雲に陰り、周りから光が消える
「…こちらこそ、すみません。」
二人はそれ以上なにも言わず、ただ静かに流れる雲を見ていた。
様々な形に変化する雲を見て、傲慢だった頃には気づけなかった彼本来の豊かな表情のようだとジェイドは一人静かに微笑んだ