小部屋の片隅で
□劣化複写人間
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なにもすることがなく、俺はベッドに横たわっていた
いや、実際にはやらなければいけないことは沢山ある
しかし仲間が気を利かせて俺を一人にしてくれた
ミュウもいない
本当に一人
コンコン───
宿屋の扉が叩かれ、現れたのは俺と同じ顔をしたもう一人の俺
「何でここにいるんだ?」
「お前の顔を見に来ただけだ。」
「明日槍が降るな。
…そこの日記に名前書いてみろよ」
なんとなく違和感を感じながら起き上がり視線を合わす
アッシュは右手で日記を持ち上げそのまま名前を書いていく
数秒あと、俺は剣を抜きアッシュに切りかかった。
赤い髪が数本舞い、地に付く前に消える
「…なにをする」
「気持ち悪いことするな。
お前誰だ?」
「被験者の顔も忘れたか?」
「残念だけど、アッシュは右利きだ。
右利きのやつがどうして右手にノートをもったまま名前を書こうとする?」
「あはははは、なんだ、アッシュは右利きだったのか!
てっきり僕は君と同じく左利きだと思ったよ」
アッシュであったモノは形を変え、漆黒の髪に暗い紫の瞳となる
いつの間にか部屋も夜のように真っ暗になっていた
ニタッと笑う口元にはギザギザの歯
血が通ってないんじゃないかと思うくらいの真っ白い肌
子供のような甲高い声
徐々に近づいてくるそれに対し、全身の血が引き無意識に手が震え寒気がする
「ねぇルーク」
「ぅぉっ!?」
正面に居たはずのそれの声が背後からして驚き、窓辺にあった鉢物を床に落としてしまった。
割れた音がする
だけど水中にいるかのように濁り、鮮明には聞こえなかった
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