もう一つの世界

□第三預言
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「…なぁ…何でお前は傷付きながらも戦うんだ?」


自分の上着をレイクに掛けながら、ルークは聞く。


ありがとう。と言いながらレイクは淡々と話し出す。



『何で戦うのか…か。

簡単に言えば《守りたいモノがあるから》だな。』



「守りたいモノ…?」


『…ちょっと、ある人物の昔話に付き合わないか?』



ルークは小首を傾げた。



レイクはそんなルークの姿を見て、深紅と紫苑色の瞳を細めた。




昔、ある一人の愚かな人間が居た。


その人間は戦いを知らない、ただの民間人。




毎日が同じことを繰り返すだけの平和な街に生まれた人間は
もちろん剣など握った事はなかった。



そんなある日、急に街が騒がしくなり、多くの兵士が出入りするようになる。



人間は、それでも剣を握ろうとはしなかった。



そしてある寒い、雪の降りしきる日


人間はやっと剣を手にした。



次々に残虐されて行く街の人々。



一度も剣を握った事の無い人間は、戦場では無力だった。




傷ついた人間を助けてくれたのは、自分の家族と友人。



人間はそこで意識を無くした。



目覚めると、ソコは人間の知っている街ではなかった。



自分を守るように覆い被さり、息耐えている友人



貫かれて、血の海に沈む両親



無惨に切り裂かれた妹



人間の目には赤く染まっている雪と、二度と動かない人々だけが映っていた。



不意に後ろから白銀の刃が振り落とされる。



人間は咄嗟に避け、自分を守るために相手を貫いた。




恨まれる様に見開いた瞳と目が合い、人間は後ずさる。



後ずさった時、貫いた剣を一緒に引き抜くと
おびただしい量の血が溢れ、相手は崩れた。



そしてこれが、初めて人間が人を殺した瞬間。







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