小説

□Bizarre Love
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怖い。


怖くてたまらない……。






あんなに可愛いかった

本当の弟のようなセフナ……





どうしちゃったの……?





いつからこんな風に変わってしまったの







ーーーこれまで

何をどれだけされてきたか……





異常なほどの電話にメール


後をつき回されて

いつもセフナに見られてる。





……さっき

とうとう無視し続けた電話に出て

セフナにストーカーだと…
電話も会うのもやめようと伝えた。





ーーーーわかってくれただろうか………








セフナはまだ若すぎるから

少し間違った道に出てしまったなら

ヒョンの俺が
直してあげなきゃならない…。





きっと…セフナなら
考え直してくれる



心を入れ換えて
元のセフナに戻ってくれる……




そう信じるしかない。








ーーーーーーー




それからというもの……



セフナのこれまでの
全ての行為、言動が

嘘であったかのように



パッタリと……全てがなくなった。





ーーーー正直、

こんなにすぐに
全てなくなるとは思っていなかったから

驚いたけど……



セフナが元に戻ってくれて
本当に嬉しかった。









……あんなことがあったけど

またセフナと前みたいに
話せるようになった。




「ルハニヒョン……
一緒に…帰らない…?」




「……うん!帰ろう!!」




前みたいに自然に
一緒に帰ることもできるようになった。





本当によかったよ……

本当に……。








心の底から

……そう思っていたのに。








ーーーーーーー




数日経ったある日

セフナとふたりで宿舎に帰ってきた俺が

俺たちの部屋の扉を開こうとすると




「ヒョン…見て!鍵あいてる!」



そう言ってセフナが俺たちの部屋の
隣の部屋を覗いている。



鍵があいてる…?


変だな、隣の部屋は
物置きで

滅多にあけることはないって
マネージャーにも
聞かされている。




「鍵、あいてるの?」


そう言ってセフナの元へ行った。


そして、


確かにあいてる扉の隙間から
中を覗こうとすると……






「…ヒョン……素直すぎだよ」



「!!!!??」



ーーーーードカッ!!!




セフナが…

俺を後ろから何かで

おもいっきり頭を殴った…




意識がーーーーー遠くなる…………







ーーーーーーー








「…っ、うっ…」



頭に…今まで感じたことのない
痛みが走る。




恐る恐る目を開けてみれば……


そこは薄暗い……物置のような部屋。







ーーーー!!!!??


両手は後ろに固定され


足も逃げられないよう
枷をはめられていた……。








こ…ここは……宿舎の空き部屋?


俺…どうして………



「隣の部屋だよ…ヒョン……」






セフナ……?







ーーーーそうだった…


セフナと部屋を覗いて……

俺はセフナに………




全てを無理やり思い出す。





頭にも…

両手首にも…足にも……

激痛が走る……







「ふふっ……ヒョン…苦しい?」



セフナが俺の前にしゃがみこむ。



「もっと苦しんでる顔……見せて?」





………背筋が凍りつく。




ーーーー何を言ってるの………






「なんで……っ?

考え直したんじゃないの……!?」







「そうだよ。考え直した……

ただひたすらに

ルハニヒョンを追いかけて
愛してもダメだって……。


僕の愛をしっかり伝えないと……


愛してもらってないって
ヒョン、勘違いしちゃうでしょ…?」




クスクス笑い
セフナの左手が俺の頬に触れる…。




その手にすら…

触れられた所から
冷たい痛みを感じる……。







「だからこうやって
2人きりになって……

しっかり僕の気持ち
わかってもらうの。


2人きりになるには
ヒョンを油断させるのが
必要だったから……」





「ーーーーだから……

普通に戻ったフリを…した…の…?」


震えた声で聞く。






「普通ーーー?

僕は今もいたって普通だけど



……おかしいのは
ルハニヒョンの方でしょう?」




セフナが顔をグッと
俺の顔に近づける。



押し返したくても
全て固定されていて

何の抵抗もできない。






「僕がこんなにも愛しているのに
ミンソギヒョンと仲良くするなんて……

おかしいと思わない…?」





セフナが

怖くて……言葉がでない。






「ねぇ….そういえば


僕まだヒョンの口から

"愛してる"って言ってもらったこと……
ないよね?」




セフナの顔が歪んで見えた。




「僕に……
"愛してる"って…言って…?」






ーーーー怖い。

怖いよ………

言葉なんか……でない。





呼吸が荒くなる。







…………何も言えない俺に、




「早く…!早く言ってよ!!!!!」


突然

セフナがポケットから

ナイフを取り出しーーーー





俺の左頬に切りつけた……



「!!!!あぁッ……いっ……」




突然の痛みと衝撃に
思わず声があがる。




「…は……ははっ……痛いの?
ヒョン……」






恐怖と痛みで
さらに息があがってくる。



左頬に……

生暖かいものが
つたっているのがわかる。









ーーーーーどうして

こんなことになってしまったの……






俺のせい?


俺がセフナを
こんな風に変えてしまったの…?








「ヒョンを傷つけるのを許されるのは
僕だけ。

ーーーだって
僕がヒョンを守ってるんだから……」







ーーーーー"守る"……?





………俺がセフナに

守ってほしいと言ったから……?










「ヒョン……
僕がこんなにも愛していること……


わかってくれるよね?



僕の愛…伝わってる……?

ねぇ……ねぇねぇねぇねぇねぇ……

ヒョンは僕が必要でしょ?



ヒョン……愛してるよ……」






だから…セフナを
こんな風にしてしまったの……?






恐怖と後悔で……

涙が溢れてくる。









「セフナ……許して……

もうやめて……」





「……やめる……?」






「…っ、お願い………」






涙と頬の血が混じった
赤いなみだが



頬をつたって
ポタポタと流れ落ちる。







「……いいよ。」





えーーーー……







涙で滲んだ瞳でセフナを見る。




「終わりにしよう」



……笑っている。







そして



再びナイフを取り出した。







「セフナ…?…何する…」





「殺すね?」







ーーーーーー殺…す…………?





「2人だけの世界に行こう…?」





「…………何…言ってるの……」





「楽しいよ…きっと………


一緒に行こう……?」









ーーーーー狂ってる…………






「…っやめて!!!!!……いやァアっ!!!!!!」





手と足を固定されているのも構わず

一心不乱に暴れる。




「…っ、暴れるな!!!!!!」





「!!!!??」





頬に……

殴られた感覚が走る。



もう

痛いのか痛くないのかも
わからない。











「っ……お願い………やめて……

殺さないで………!!!!」








「……終わりにしたいのは
ルハニヒョンでしょ……?



それに死ねば

もう僕が
ヒョンを守る必要もなくなるよ?

だって
僕たちしかいないんだから………」







なんで……?


もう……全部…消えて……。


消えてよ……。









声が
今までにないほどに震える………。









「セフ…ナ……許して……お願い…っ…

もう一度…考え直して……っ?」






セフナが

ため息をついて言う。





「わかってよ、ルハニヒョン……

これ以外…もう方法がないの。



……大丈夫。

首をはねればね、

血はいっぱい飛ぶけど……


すぐ意識なんて
なくなっちゃうから」






セフナが俺にグッと近づいて

俺の首にナイフを添える……。







ーーーーやめて……

怖い……


死にたくない………!!!!!!





「やめて……っ!!!!!!


おねがいセフナっ……

セフナぁああっ!!!!!!」





首筋に……

ナイフの刃が立つ。









「あとで会おうね……




ーーーーバイバイ…ヒョン………」










「いや……っ


いやああああああああああああッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」


































ーーーーーーーー

……俺が最期に感じたのは………




首に走る

切り裂かれる痛みと………



血が噴き出す温かみ………。






ーーーーーほんとバカだよ




こんな死に方……


セフナに殺されるなんて………















「ふふっ……ヒョン………

そっちの世界はどう?」








ーーーーー首のない俺に向かって


血だらけのセフナが話しかける。







「……今行くからね」







自分の首に

ナイフをあてて……








「これからは……2人だけだよ……?


ずっとずっと……

一緒にいられる………




ねぇ?……ルハニヒョン……」




















ーーーーーーー部屋に







美しいほどに

赤い血が



再び



飛び散った…………。











Fin.
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